ギリシャ急進左翼連合政権の変節

シリザ・ツィプラス首相への失望 ラムジー・ハルード(『パレスチナ・クロニクル』編集者)18年2月 翻訳 脇浜義明 出典・Truthout

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 ほんの一瞬だが、ツィプラスが率いるシリザ(急進左翼連合)が、ヨーロッパで休眠中の左翼運動を目覚めさせた、という希望を抱いた。EUやその関係金融機関が押し付ける苛酷な緊縮財政の地獄の中から新しいギリシャが生まれた、と思った。

 2015年1月にシリザが人民の闘いを背景に政権を握ったとき、政治家、銀行、官僚に奪われていた人民主権を取り戻すチャンスだと思った。しかし、そうはならなかった。首相となったツィプラスは路線変更、国民を圧迫してきたネオリベラル政策へ走った。

 シリザは政治的・イデオロギー的に背信行為をしたばかりでなく、物理的にもギリシャを売った。今やギリシャのすべての地方空港はドイツ資本が営業、ギリシャ電気通信公社は民営化、その株の大部分をドイッチェ・テレコム社が所有。政治経済学者のひとりは、「国家売ります」の札を民営化庁の看板として貼ればよいと言っている。

 経済的従属は政治的従属の序曲だ。右翼シリザは、外交面でも近隣諸国を裏切っている。ツィプラスは地中海で発見された天然ガス田開発のためにイスラエルと連携、政治的・軍事的に親イスラエル路線へ舵を切り替えた。イスラエルにとっては、ギリシャの経済的困窮につけ入り、東地中海地域での影響力を拡大、「のけ者国家」から脱皮するチャンスである。

親イスラエル路線への転換

 2010年、トルコから出航したガザ支援船マヴィ・マルマラ号をイスラエルが襲撃、トルコ人を9人殺害、多数に負傷を負わせた事件で、両国関係が悪化した。イスラエルは、歴史的にトルコと仲がよくないバルカン諸国に近づきたい。とりわけギリシャとキプロスは、トルコへの政治的けん制となり、その上イスラエルにとって経済的チャンスになる国々である。マヴィ・マルマラ号事件の後、当時のギリシャ首相はイスラエルを訪問、続いてネタニヤフ首相がギリシャを訪問、二国関係が急速に深まった。

 最大の要因は、レバノンを含む数カ国の領海にまたがって存在するガス田地帯の権益である。イスラエルが思惑通りレバノン沖合のガス田から天然ガスを採取する計画を進めれば、再び中東戦争の危機が高まる。

 大衆運動を背景にツィプラスが政権を握ったとき、パレスチナ人も希望を抱いた。シリザはイスラエル批判政党で、政権に就けばイスラエルとの関係を断ち切ると公約していたからである。ところが、逆に関係が深まった。政権を握った急進左翼だったシリザは、イスラエルと軍事協定を結び、共同軍事演習を行った。

ギリシャが帝国主義の手先に

 それに合わせるかのように、ギリシャのメディアはイスラエル批判姿勢から反パレスチナ姿勢へと転じ、イスラエルを大喜びさせた。ギリシャの右翼に転向したジャーナリストはイスラエルの右翼新聞『エルサレム・ポスト』など多くの新聞に寄稿、かつてギリシャ人は親パレスチナだったが、若い世代のギリシャ人は親イスラエルである、と書きまくった。

 「このプロセス(親イスラエル化)には、学校教育を通じて行われるから時間がかかるが、メディアの姿勢が変わったことはよい徴候である」。

 イスラエルのルーヴェン・リヴリン大統領がギリシャを訪問、ツィプラスやその他の高官と会談した。彼は、パレスチナ側が頑固で和平プロセス再開を拒否するので、危機が高まっている、と言った。ツィプラスはこの大嘘を黙って受け入れた。かつてのギリシャは、例えば1981年、PLO(パレスチナ解放機構)に国家に準じる外交権を認め、米国とイスラエルの脅迫に負けなかった。そういう世代が終わり、ツィプラスのように「倫理的に柔軟な」指導者の時代になった、と言うのだ。

 しかし、ツィプラスがイスラエル主導の経済的・軍事的同盟を結んだのは、たとえ政治的経験が浅く、日和見的だとはいえ、国の指導者としては無責任である。

 ギリシャ社会主義労働者革命党の指導者は、ギリシャがこの地域で帝国主義の手先になるのは愚かな行為で、終局的にはギリシャ人民を悲惨に追い込むことになる、と批判している。

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