あれは「事件」だったのか!?

和歌山在住 写真家・山田耕平

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人民新聞紙面改革の一環として上質な写真を入れて読みやすくしたいと計画している。そんな折り写真家の山田耕平さんに出会い、写真を主にした記事の寄稿を依頼。第1弾として、「和歌山・白浜の水難偽装」事件の記事が寄せられた。昨年7月、和歌山県白浜でシュノーケリング中の女性が溺死した。ところが、先日、女性の夫が殺人容疑で逮捕され、一挙に「事件」の様相を帯びてきた。山田さんの地元で起きた「事件」だが、事故直後、溺死した女性が救急隊の救命措置を受け、搬送されている場面に遭遇したという。当時の様子を写真とともにレポートして頂いた。 (編集部)

 その日、2017年7月18日は快晴であった。7月も下旬に入ろうとしているにもかかわらずそれほどの暑さは感じなかった。防災無線がいつものように5時をつげ、子どもたちに帰宅を促していた。ちょうどその時であった、救急車がサイレンを轟かせながら私のバイクを追い越していった。さして気にも留めなかったが、前方で停車したので、民家もないこの辺りでなんだろうかと思った。

 見ると、隊員がストレッチャーを持って浜の方に降りてゆく。急病人でも出たかと思ったが、ついて行くと、砂浜で蘇生処置を施している。子どもでも溺れたのかと考えたが、横たわっていたのは若い女性であった。救急隊隊員が懸命に胸骨圧迫、いわゆる心臓マッサージしている。ということは、意識がない!ということか。そう思うと同時にシャッターを切っていた。私が立っていた場所は崖の上になっていて、砂浜へは階段を降りてゆかなければ行けない。そこで200ミリレンズに換えて撮った。ファインダーの中の人物が大きくなった。女性はピクリとも動かない。

 やがて医師が看護師とともに到着したが、一刻を争うようで救急車へと乗せられた。この時点では、海水浴客が溺れた事故というふうに考えていたので、とりあえず以前からやっているように読売新聞へ連絡。この件は追ってまた書きます。

 和歌山支局の反応は「事故ですか。今のところ掲載枠がないのでせっかくですが」。大阪本社へ電話をすると「調べて返事します」その日はそれだけで終わった。

 3日ほど経って、同じように県道を走っていると前方で検問。「こんな時間帯にこんな所で?」といぶかっていると、交通警官ではなく私服の刑事。聞くと、事件性あり! これには驚いた。簡単に事情を聞かれ「また何かありましたらご協力をお願いします」刑事がこんなに丁重に話すのを初めて聞いた、が率直な感想。

疑わしくは被告人の利益に

 すっかりこの事故のことを忘れていたが、今月19日の夕方のNHK和歌山のローカル・ニュースで「昨年7月白浜の海水浴場で(略)夫を逮捕」思わずテレビの方を振り返った。警察はこの件をずっと追っていたのである。それにしても…。

 この記事を書いている今日(4月22日)現在で逮捕された夫はあくまで被疑者である。19日来、在阪局を始め全国ネットでもあたかも「クロ」のように受け取れる報道をしているが、逮捕された時点では被疑者に過ぎない。また、疑わしきは被告人の利益へという刑事司法の精神、確定判決が出るまでは無罪推定の精神がある。記者はこの姿勢でこの「事件」を追ってゆきたいと考えている。

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