【実録】公安警察取り調べ(2)

「刑事になった理由は?」 編集部 山田洋一

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 様子見は、3日目の雑談から始まった。取り調べの際の大原則は、完全黙秘である。刑事が、「いい部屋ですね。無垢材をふんだんに使ってお洒落な喫茶店にでも入った感じでしたよ。憧れるなー」。取り調べは、こんな刑事の言葉で始まった。担当刑事は、30才台前半、筋肉質の締まった体。「空手かなんかやってんの?」と聞くと、「ラグビーやってました」。今も体内年齢=18才というのが自慢だ。

 彼とは、自宅から行く他所への護送中、助手席から振り返って、「取り調べを担当しますのでよろしくお願いします」と挨拶してきた刑事だった。私と同じ方言が時々出てくるので、「出身は四国?」と聞くと、「徳島です。わかりますか?」徳島県警から移籍してきたそうだ。縄張り意識の強い警察組織のなかで、県をまたいで移籍。しかも移籍先がコーアン3課だ。「エリートじゃん。ひょっとしてキャリア?」とくすぐってみると「いやいやそんなんじゃないですよ」と照れていた。

 取り調べ初日なので、私からは、次の諸点を伝えた。(1)質問はどんどんすればいいが、黙秘する、(2)ただし、あなたの存在を無視することはしない。質問には、「黙秘します」との応答は必ずする、これが私のルールであると伝えた。

 刑事は、「わかりました」。高圧的ではなく脅かすような大きな声を出すこともない。礼節はわきまえているので、そのかぎりでは、紳士的に対応することにした。何といっても相手は、ちょうど私の息子の世代なのだから。

 その上で私は、「なぜ刑事になったのか?」聞いてみた。「刑事物のドラマを見て憧れたんですよねー」「わかるわかる」、「それで現実はどうなの?」「いやー、書類作りばかりやらされて、お役所仕事ですね」。素直な応答だ。彼は、教師か警察官かで進路を迷ったという。(次号へ続く)

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