【イスラエルに暮らして】非暴力デモにドローン攻撃

風船や凧をあげて抵抗する民衆空爆やドローンでも火は消せない イスラエル在住 ガリコ美恵子

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瀕死のけが人を治療するガザ病院の日本人外科医

 「イスラエル兵に撃たれて運ばれてきた怪我人の太ももの付け根から、血が噴水のように噴き出していた。僕は点滴用ビニールを包帯代わりにして止血した。重症の怪我人が次々と運び込まれてくるガザの病院では、医者が全く足りていない」―こう語るのは、北海道パレスチナ医療奉仕団の猫塚義夫整形外科医(71)。7月4日から14日朝まで、ヨーロッパ・ガザ病院で、怪我人の対応にあたっていた。

 オスロ合意(1993)で約束されていたパレスチナへの「帰還の権利」は反故にされ、イスラエルによる占領と封鎖が続くガザ。3月30日に開始された「故郷へ帰還する権利とガザの封鎖解除を求める非暴力行進」は、ガザ・イスラエル境界線で現在も続いている。

 イ軍は、800m先まで射撃可能な米国レミントン社のM24ライフル銃、イスラエルのタボール社の5・56㎜ライフル銃、高速銃SR25、射撃するドローン、毒ガスや汚染水を噴射するドローン、バタフライ・ブレット(体内爆破する弾。1899年ハーグ・協定で禁止)などの「新兵器」を使用している。

 ここ100日間で、ジャーナリスト、医者、救急隊員、女、子どもを含め計138名の民衆が虐殺され、16000人が重傷を負った。複雑な手術を要する怪我人ばかりだ。猫塚医師は17日までガザで怪我人の対応にあたる予定だったが、急遽15日にガザを発った。

 猫塚医師はこう続けた。「13日の金曜は夜まで怪我人の救急処置を行い、深夜手術は朝までかかった。14日午前11時、仮眠するためタクシーで宿に戻った。午後1時頃、突然大音響とともに地鳴りが響き、目が覚めた。近くで空爆があったのだ。ヨーロッパ・ガザ病院は、宿から車で30分超、国境から3キロメートル。空爆を受けている南部ラファからも4キロメートルぐらいの最前線病院だ。宿を出ると危険なので、病院に戻ることはできなかった。このままいても医療奉仕活動は不可。『退避』を決断した。

 しかし、このままガザの地で空爆に怯えながら生活せざるを得ないパレスチナ人のことを考えると、後ろ髪をひかれる断腸の思いだ。エルサレムに戻った今でも、彼らのことを思うと胸が張り裂けそうになる。

 金曜朝、僕はガザのデモ現場を観に行った。老人が孫の手を引いてデモを観にきていた。老人は僕に声をかけてきた。『俺たちは1948年に故郷から追放され、惨めな人生を送っているけれど、あの塀の向こう側に俺たちの故郷があるんだ、と孫に語り伝えている。俺たちは俺たちの土地のために闘っているのだ』―そう言って老人は孫の手を引いて帰っていった。僕は彼らの生きることへの強い願望、不屈の精神、人としての尊厳を強く感じた。今回もパレスチナ・ガザの人々から『本当の不屈』を学んだ。今秋、北海道医療奉仕団のメンバーを連れて必ず戻ってくる」

創意工夫で抵抗する若者たち

 民衆はデモ現場で、パレスチナの民族舞踊ダプカを踊ったり、スポーツ競技をしたり、風船を飛ばしたり、凧あげしたりと、非暴力抵抗を続けている。ラケットで軍による催涙弾を跳ね飛ばす若者もいて、やがて火炎瓶を紐で風船や凧にくくりつけて飛ばすようになった。それは風に乗って、イスラエル側に運ばれ、田畑を焼いた。現在、イスラエル当局が凧や風船をドローンで撃ち落とそうとしているが、十分に対処できていない。消火作業が続いているが、火は広がるばかりだ。これに対し、イスラエル当局は、ガザ当局に数千万円の損害賠償を請求している。

 7月13日も、ガザの民衆は火炎瓶つき風船や凧を飛ばした。翌14日、イスラエル軍は、風船と凧への「報復」としてガザ空爆を開始した。イスラエルのメディアは、「風船の責任はハマスにある」として、ハマスの拠点を空爆。だが、空爆の犠牲になったのは、ハマスに関係のない、公民館で遊んでいた十代の少年2人である。

 ハマス党部隊は空爆への「報復」として、イスラエルにロケット弾を発射。イスラエルのガザ周辺地区ではこの日、警報が計90回鳴った。イスラエル人民家に1本落ちて数名が軽症を負ったが、死者はない。ほとんどが空き地に落ちたか空中でアイアン・ドーム(防空システム)によって撃ち落された。

 一方イスラエル軍は、ガザで100発の空爆を行った。14日夜から15日にかけて一時停戦となったが、16日、軍は空爆を再開した。今これを書いている間も、軍はガザを空爆している。命を落としているのは一般民衆である。

殺人ドローンの展示会イスラエルが8月 東京で開催

 ダ・ジャン・イノベーションズ社(中国)のドローン=マトリス600とファントム3は、毒ガスを搭載できるようにイスラエル国境警察によって改造され、ガザの民衆に直投下されている。アエロナウティックス(イスラエル)のドローンは、汚染水を積載し、遠隔操作する他、射撃も行う。

 エルビット・システム社(イスラエル)は、公共の場で使用することを目的として製造された「ヘルメス900ドローン」「ヘルメス450」を、射撃する「殺人ドローン」に改造した。

 3月30日、ガザの帰還行進デモが開始された日の夜、軍共同武器開発技術部門が、数百台のドローンを中国に追加注文したことが公式発表されている。

 4月、イスラエル軍は、「安全に」射撃する兵士の姿や、「殺人ドローン」を「安全に」リモートコントロールする兵士の姿を撮り、デモ鎮圧に「成功を収めた」と、海外から武器を買いに来た得意先に発表した。5・6月、当局は軍事会社と共同で、武器見本市を開催し、上記の「殺人ドローン」など、「安全な新兵器」を展示発売した。この見本市には世界各国の政府関係者、軍人、軍事産業業界人に加え、イスラエル人の軍事関係者1000名が参加した。

 6月、イ軍の専属会社は、特殊ドローンをドイツ軍に大量輸出する契約を結んでいる。イスラエル軍とイスラエルの軍需産業は、ガザを武器見本市にしているのだ。

 イスラエルのドローンは、過去10年間で世界のトップに躍り出ている。なお、毒ガスや汚染水は、東エルサレムやヨルダン川西岸地区でも、パレスチナの民衆を対象に日々使用されている。

 一般民衆を虐殺、虐待するのはお手のものだが、風船や凧に太刀打ちできない、イスラエルの軍事・防衛会社の面々が来月、日本に上陸する。ISDEF Japan=軍事・防衛エキスポが、8月29、30日、川崎市とどろきアリーナで開催される予定だ。ウェブサイトに、こう書かれている。

 「ISDEF Japan=イスラエル防衛・国土安全保障エキスポは、東京で開かれる、世界最高規模の軍事・防衛エキスポである。20年東京オリンピックには約4千万人の観光客が日本に押し寄せると予想されており、防衛は最も重要である。そこで、サイバーセキュリティなど、最新技術と最新部品を披露する」

 このエキスポの主催はイスラエルであり、出展者のほとんどは、イスラエルの軍事産業会社である。

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