【本 BOOK】母の憶い、大待宵草―よき人々との出会い古川佳子・著

評者 中川幹雄(北大阪合同労組)

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箕面忠魂碑違憲訴訟を闘った人々

 箕面忠魂碑違憲訴訟をご存じだろう。本書は、大阪府箕面市が学校敷地にある忠魂碑を公費で移設したのは憲法違反だとして、1975年以来市民運動を始めたグループの当初からの中心メンバー・古川佳子さんが著したものだ。
 本書は著者・古川さんの父母と夫、訴訟を共に闘った仲間と、運動の中で得た友人知人(その中には有名無名の人々)の10名が紹介されている。
 全体に読みやすい。随所に短歌や詩的表現があり柔らかく、木々や草花の知識があれば、さらに愉しめる。著者は前の戦争で実兄2人を失っている。その憶いは深い。著者の母上はなおさらである。

 本書にいくつか母上の短歌が載っているが、その一首「岩角にギヤマンの瓶を打ちつけて 砕きてみたき衝動を覚ゆ」。晩年の歌である。晩年に至るまで激情をうたう母を憶うとき、著者・古川さんの心情はいかばかりであろうか。

 著者と交流のあったひとり、伊藤ルイさんの章が秀逸だと感じた。伊藤ルイさん―父大杉栄、母伊藤野枝として生を受けた人。評伝よりルイさんの生身の人を著者の筆で知った。著者の居宅は箕面の旧い住宅地で、現在もルイさんが著者宅を訪れた当時とあまり変化がない。
 その地の川辺は切り立った崖があったりして樹木が多い。木に造詣が深いルイさんとの逸話は楽しい。

 私が知っている古川さんは、息子さん古川周平君と小谷啓二君をプリズムにしているだけだった。70年前後、ベトナム反戦気運が全国で炎え上り、私も地区反戦青年委員会という組織を通して、彼ら2人と交流した。夜を徹して古川君の居宅の2階で議論が続いたものだ。本によると、その2階から45年の数次に及ぶ大阪大空襲の火炎による明かりが判明できたという。今では思いもよらない。

 上記のごとく、古川佳子さんと私は縁浅からぬものがある。件の忠魂碑は私の出身小学校である箕面小学校の庭にあり、それが同西小学校へ移設された縁。箕面小学校時分は、その台座や本体によじ登り冒険心を満たしてくれた。台座上でふかし芋をほうばりながら小便もしたこともあったようだ。長じては、古川君のお母さんとしてのつながり。本書の評者として充二分の資格者である。
 古川君のお母さんはお茶を振る舞ってくれた人。本書の著者は古川佳子さん。運動は人を創り変える。人は運動を作る。

 2018年3月発行/発行(株)白澤社/発売(株)現代書館/2600円+税/全国の書店で5月中旬より発売

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