若者が住むシェアハウスに学ぶ
「禍転じて福となす」と言ってしまっていいのか、母親の介護というある種、密接的な関係のなかで予想外のちょっとした運命的な拡がりを感じている、という。
「めだか古書店」の西田さんは、もともと古本屋に対する憧れはもっていたが、なかなか条件がそろわなかった。
母親の介護をきっかけに、むかし抱いていた夢を片手間ならできると考え、古本屋の経営にのりだした。
古本屋に行き着いたのにも、いくつかの経緯がある。お酒好きだった西田さんは、まずは健康上の理由からベジタリアン生活への転身があり、そこから自ら農業に携わることを考え、日吉町の胡麻にIターンした。
母親の介護の関係もあり、いわゆる半農半Xの生活をしていたのは結局半年余りだったが、半Xとして食品の宅配業をしていたことから、Iターン仲間とのつながりはできているという。
今回開業しためだか古書店は、園部駅近くにある築200年余りの古民家をリノベーションしたところで、20~30代の若者が住むシェアハウスの一階部分を借りて営んでいる。
西田さんは、同じIターンの人たちとのつながりのなかで次のように動向を分析する。
「Iターンの人たちのなかでも動きがあって、いわゆる団塊の世代の人たちには、農村を変えなければ、資本主義経済のいわゆる対抗としての農村、という志向があったが、なかなかうまくいかない部分もあったんでしょうね。ぼくらの世代は、まずは自分の食の意識、安全な食という入口からの農業の重要性を感じとっている。
このシェアハウスで暮らしているような世代は、そうした義務感からではなく、自分の暮らし自己が主体となっている。SNSを通じてかつてのような田舎の疎外感というのが大分解消されて、純粋に自分の可能性を感じる人たちが農村を選択している。そのようにぼくも、若い人たちに刺激を受けてその波にのっかっていきたいと思っている」
「めだか古書店」が若者たちが住むシェアハウスで営まれていることは、西田さんにとって重要であるようだ。
農村で期待される文化的な発信
また、文化的な発信の少ない農村のなかでの周囲からの期待も大きい。今のところ客層は食品配送のときに培ってきたIターン仲間などが多いが、そのこともあってか、自分と考え方の近い本がこの「めだか古書店」には集まっている、と言う。
西田さんがIターンを選択する過程で影響を受けた本。食に関するもの、農村連帯経済、東洋思想などが、自然と集まっている。
そのような思想的なものが、若者たちとの関わりのなかでどのようなものを生みだすのか。まだ営業を始めたばかりだが、今後の西田さんの活動に目が離せそうもない。
(編集部 矢板)