「立て看規程」に反発した学生・市民によって「吊り看」「垂れ看(横断幕)」「洗濯物」などさまざまな種類の掲示物が設置されたが、5月1日午前7時、大雨の降るなか、京都大学キャンパス内。およびその周辺に設置されていた立て看板は、横断幕・職員たちによってほぼ全てが撤去された。
(文責・編集部 吉田)
京都大学は、立て看板文化が今なお残っている数少ない大学として知られている。しかし、その文化は今、2017年12月19日に京都大学当局が発表した「京都大学立看板規程」という規程により大きく揺らいでいる。
この「京都大学立看板規程」は学内外で大きな反響を呼び、話し合いや制度見直しを求める運動が今も展開されている。今回、「立て看規制を考える集まり」準備会(以下準備会)の一員として運動を展開している学生に話をきいた。
準備会は主に、大学自治と表現の自由という二つの問題意識から反対運動を展開している。
「京都大学立看板規程」は大学内の役員会で決定し、達示という形で公表された。決定プロセスに、立て看板の当事者は一切かかわることができなかったのである。これはおかしいと感じた有志が準備会を組織し、学内の各団体と連名で2月と3月の2度にわたり説明会の開催を求める要求書を提出した。しかし、大学の反応は、「説明会を開く予定はない」という内容のメールを準備会の連盟団体の一つに送るだけであったという。
そして、立て看板を規制すれば学生が意見を表明する手段は一つ減る。また、日常風景の中にメッセージを出すという開放感やどんな人でも出すことができるという立て看板は、他の手段では代替することのできない表現手段である。こうした表現の自由の観点からも、規制は問題といえるだろう。
なぜ京都市は立て看板を規制するのか
なぜ反対運動が起きていながらも、立て看板を規制するのか。大学は京都市の指導を受けて規程を作成したそうである。そこで、問題の発端ともいえる「京都市都市計画局広告景観づくり推進室」に話をきいた。
その理由はあくまで「景観を守るため」であるとのことだった。学生を黙らせる、という目的ではないそうである。
ただ、例えば一区画あたりに立てて良い看板の面積制限が存在し、京都大学の広大な敷地は公道の走り方の関係で「一区画」であり、そこに立ててよい看板の面積は著しく制限される。そうした融通の利かなさも話を聞いていると感じられた。
そもそも守るべき景観とはどのようなものか、というのは恣意的な判断になりがちであり、景観をどのように決めているのかについても質問をした。その回答は、条例を作成する段階でパブリックコメントも集めつつ聞いているというものだった。とはいえ今なお賛否両論あるのは事実らしく、この回答をしているときも何となく「バツの悪さ」のようなものが感じられたのも事実である。
規程は5月1日に施行された。大型連休を前に多くの立て看板は自主撤去されたが、規程に反対する団体の中には今なお立て看板を立て続けている所もあり、また、垂れ幕や段ボールなどを利用した立て看板以外の抗議の意思を示す掲示物も学内には見られる。今後の動向に目が離せない。
(編集部 佐藤)