気候を変えるのではなく社会システムを変えよう~脱石炭と脱原発の結合

ボン・現地報告 国連会議「COP23」対抗アクション

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寺本 勉(ATTAC関西グループ)

 軽快なリズムに乗って大きな地球儀を転がし、カラフルな衣装の人々が踊りながら、「気候を変えるのではなくシステムを変えよう」と訴え、雨模様のボン市内を練り歩く。これは、COP23対抗アクションの一つとして行われた11月11日のデモの様子です。

 11月1日から12日まで、パリとケルン・ボンに滞在して、反核世界社会フォーラム(反核WSF)とCOP23対抗アクションに参加しました。COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)に関連したアクションに参加するのは、2015年のパリ(COP21)に続いて2回目になります。

 今回のCOP23では、パリ協定を実際に運用するルールブック作りが最大の課題と言われていました。しかし実際は、気候変動の危険に現実にさらされている島国や途上国が、先進工業国に対して、温室効果ガス排出削減目標のさらなる引き上げ、気候変動による損失への補償、パリ協定開始(2021年)以前の温室効果ガス削減の強化などを強く求めました。そして、それに対応する先進工業国の分裂・分岐、イニシアチブの欠如があらわとなりました。背後には、多国籍企業の影があります。

 イギリス・カナダ主導で「脱石炭に向けたグローバル連合」が結成されましたが、こうした国では原子力依存からの脱却は進んでいません。フランスは「2023年までに石炭火力を廃止する」と発表したものの、「2025年までに原発依存を50%にする」という目標は延期しています。

 一方、ドイツは2022年までに原発を全面停止することになっていますが、石炭火力からの撤退は明言せず、むしろ石炭採掘や石炭火力の増強をめざしています。こうした原子力依存か、石炭依存か、という不毛の選択の裏には、原子力ロビー、石炭ロビーの働きかけがあることは容易に想像できます。

 問題外なのは、アメリカと日本です。COP23で唯一行ったイベントが「気候緩和における、よりクリーンで高効率の化石燃料および原子力の役割」であることからわかるように、トランプ大統領のもとアメリカ政府は石炭と原子力の両方を推進する立場です・安倍政権もこれに100%追随しています。アメリカと日本への環境NGOからの批判は強く、COP23期間中に、日本投資開発銀行がインドネシアの石炭火力発電所への融資を決めたことに対しては、会場で抗議行動が展開されたほどです。
原子力は気候変動の解決策ではない」

 こうしたCOP23の混迷に対して、ATTACドイツをはじめとしたドイツの社会運動団体やBUND(FoE「地球の友」ドイツ)などの環境NGO、緑の党・左翼党などが中心になって、対抗アクションが組織されました。11月4日に25000人が参加した「気候を守れ! 石炭を止めろ!」デモ、同日のハンバッハ炭鉱での3000人が参加したデモ、民衆気候サミット(3~7日)、11日の2000人が参加した「気候変動ノー!」デモなど、多彩なアクションが展開されました。

 私が参加した11日のデモは、何十mもある巨大バナーや、トランプ大統領のそっくりさんなど、カーニバルに行っても通用するカラフルなものでした。ATTACドイツは、軽快な音楽を流すサウンドカーを先頭に、大きな地球儀を転がしデモ行進しました。

 そして特筆すべきことは、ハンバッハ炭鉱の採掘拡大に反対するグループ(鉱区内の森の中で樹上に小屋を建てて活動している)と「原子力は気候変動の解決策ではない」というバナーを掲げた脱原発グループが一緒に参加していたことです。

気候変動の闘いは人類の命運決める

 つまり、先進国の分岐とは対照的に、運動の中では脱石炭と脱原発のつながりが実現していたのです。解散集会では、ビア・カンペシーナ(農民運動の国際的ネットワーク)代表が「このままの生活を続ければ、人類は滅びてしまう」と成長を前提としない社会への転換を訴えていました。石炭でも原子力でもなく、経済的・社会的・文化的システムを変えることによってのみ気候変動を止めことができるというメッセージが鮮明に提起されたということです。これは私にとって、今回の一番の成果でした。

 もう一つ私がキーワードだと思ったのは「核植民地主義」という考え方です。アメリカの先住民「ディネ・ランド」(政府は「ナバホ・ネーション」と呼ぶ)代表をはじめ、先住民を中心に反核WSFとCOP23対抗アクションを通じて、提起されていました。これは、先進工業国のエネルギー需要を満たすために、途上国、とりわけ先住民地域でウラン鉱山を開発し資源を略奪した上で、後始末をしないまま放置する、利益だけを持ち去って害悪のみ残していくという核政策を意味しています。この中には先進工業国が歴史的に、環境債務、核債務を途上国に対して負っているという考え方が反映されています。

 次回のCOP24は、ポーランド南西部のカトヴィツェで開催されます。今後数年間の気候変動をめぐる闘いは、人類の命運を決めるといえる重要性を持っています。私たちを含む社会運動、環境保護運動の真価が試される闘いになることは間違いありません。

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