国連総会は、トランプの「エルサレムはイスラエルの首都」を非難する決議を、賛成128(日本も含む)、反対9、棄権35(カナダやメキシコ)を可決したが、法的拘束力はない。安保理は、「米大使館エルサレム移転」の非難を14対1で決議したが、反対した米国が拒否権をもつため、トルコとイェメンが総会へ提出した。安保理には英・仏同盟国がいるので、14対1という結果は重要であろう。
これは、二国解決案にこだわるカルテットと、カルテットから抜けるトランプの米国との路線対立。トランプは既成事実を認めて「大イスラエル主義」に応じる発言をしたのに対し、欧州と国連は既成事実に目隠して偽善的リップサービスをするだけで、どちらも平和と民主主義と人権尊重を目指す解決にはならない。親米トルコとイエメンが総会へ非難決議を提出したことも、面白い。イランを中東地域の敵とし、パレスチナを犠牲にして、主としてスンニ派アラブ諸国とイスラエルの外交関係を築こうとするトランプの新中東政策(彼の言葉では「ラスト・ディール」)に協力するサウジアラビアやエジプトも非難決議に賛成した。自国民衆の反乱を恐れてのことであろう。
非難決議に反対したのは、米国とイスラエルはもちろんだが、マーシャル群島、ミクロネシア、パラオ。これらは事実上の米国植民地。同じように米国の資源略奪に依存して政権維持している人口1万人のナウル。イスラエルからの兵器で国民を抑圧している西アフリカのトーゴ。イスラエルと友好関係にある右翼政権支配下のグァテマラと、不正選挙で右翼が政権を握ったホンジュラス(左派パレスチナ系サルバドール・ナスララ候補の得票を大きく上回っていたが、突然当局が開票速報を中止させ、翌日開票を発表したときには、右派のホアン・オルランド・エルナンデス候補が勝っていた)。
全米イラン系アメリカ人会議のトリタ・パルシ代表は、投票結果を世界人口に換算した。それによると、米国・イスラエル派は世界人口の0.5%、棄権派は9.0%、反対派は90%。大した意味はないが、愉快である。アラブの石油を気にする日本は、さすがに今回は米国に尻尾を振らなかったのも、愉快。(編集部・脇浜)