「原発銀座=若狭」の復活ねらう関電
10月15日、大阪で「大飯原発動かすな! 関電包囲全国集会」と御堂筋デモが行われた。主催は「大飯原発うごかすな!実行委員会」。大雨の中500人以上が集まった。賛同団体58、個人での賛同は198人に達した。
この春に高浜原発を動かした関西電力や政府は、来年1月と3月に大飯原発3・4号機の再稼働を行う予定だと発表している。さらに40年越えの老朽原発高浜1・2号機、美浜3号機の再稼働もたくらみ、「原発銀座・若狭」の復活を狙っている。脱原発、反原発の民意を蹂躙しようとするものだ。
政府と関電は、若狭の原発を次々に再稼働させることにより、日本中の原発再稼働に弾みをつけ、原発依存時代の再来を狙っている。したがって、大飯原発再稼働阻止の闘いは、「全国の原発を廃炉に追い込むか、再稼働させるか」の最大の別れ目だ。実行委は、その時を闘いぬくために、組織陣形の構築を早急の課題とし、8月11日、『原子力発電に反対する福井県民会議』と『若狭の原発を考える会』の呼びかけに応じて、関西および福井で反原発、脱原発を闘う人々が、「大飯原発動かすな!実行委員会」を結成したという。
集会は「関西電力、原発やめろ! 大飯、高浜動かすな!」という怒りのコールから始まった。東京・茨城・四国各県など全国からの参加者も発言した。この日のために日帰り参加した、強制避難区域から避難を続ける福島県大熊町会議員の木幡ますみさんは、「大熊もどこもゼネコンの食い物にされている。箱物だけ立てて『帰れ』と強弁されても帰れない。健康被害も増えている。こんな被害を生み出す原発はどこでも動かしてはいけない」と訴えた。
今回は新社会党、共産党からも政党アピールを受けた。折しも来る衆院選で「脱原発」が争点に浮上したが、「本物と偽物を見分けよう」という発言は多くの人からなされた。大飯原発差し止め訴訟の当事者からも発言が続き、関電が一審判決を無視して再稼働に突き進むことは許されないことが明確になった。さらに福井現地からも多数が参加し、大飯町住民は「再稼働は多くの人が不安を感じている。あまりに地元の意思は無視されている」と話した。
「娘の体を脅かすものは再稼働だけではありません」―避難者
関西各県からも10団体が発言。粘り強く関電の多くの原発を止める動きがあることが再確認された。そして「GoWest,ComeWest!!! 3・11関東からの避難者たち」の下澤陽子さんも発言。下澤さんは、娘さんの「原因不明」とされる体調不良に被曝の危機を感じ、神戸へ避難移住した。彼女は、今なお続く健康被害に言及した。関東の避難者が大集会で発言することは珍しいため、長めに紹介する。
「娘は友達にろくにお別れも言えず逃げるように神戸へ来ましたが、移住後は元気を取り戻し、今は大好きな友達と楽しく毎日をいきいきと過ごしています。ずっとここにいたい、日本で過ごしたいと娘がよく言います。今度事故が起きたら自分は日本にはいられないことを娘はよく分かっています。娘の体を脅かすものは再稼働だけではありません。福島原発事故は終わっていません。今も空に海に膨大な放射性物質を日々撒き散らしながら進行中です。
私たち関東からの避難者たちは、何の支援もないなか健康被害などを抱えながら自力で必死に避難をしてきました。ゆえに避難した者同士が助け合えるよう、これから避難してくる人たちを支え合っていけるよう、私たちは活動を始めています。
逃げることは 並大抵のことではありません。経済的なことだけでなく、放射能の問題は人と人との関係を傷つけ切り裂いてきました。国が放射能汚染や健康被害などないことにしているからです。だからこれほどまでに逃げることが大変なのです。それはこれからも原子力政策を進め、こうやって再稼働をしていく必要があるからです。
再稼働が続く限り、私たちは放射能汚染から守られることがないのです。なんとむごいことか、と思います。この現実に向き合うのが今日本に生きる人たちのやらなければならないことです。
原発は経済でもエネルギーの問題でもない、命の問題です。娘は、私たちは、この国で健康に生きていきたいのです。脅かされるのは嫌なのです。今の現実をしっかり見つめる力と、未来の事を考える力と人間の持っている心を取り戻しましょう。再稼働はやめましょう」
福井現地での活動と議論
最後に、主催の木原代表(若狭の原発を考える会)は、「原発再稼働は民意に反する行為だ。関電・政府の原子力体制は人の尊厳、生きる権利をないがしろにしている。原発が無くても電気は足りることは、福島事故以降に実証された。原発は危険だ。人の手に負える装置ではない。大飯原発再稼働阻止の現地闘争にも結集を!」と呼び掛けた。そして靫公園に移動してデモ隊が出発し、長い御堂筋コースで沿道へ再稼働反対!と声を上げ続けた。
実行委は、今後の集中課題として、(1)原発立地・若狭で展開しているアメーバデモをさらに充実させる、(2)原発電気の消費地・関西では、金曜行動などの、関電本店・支店への抗議行動もさらに拡大する(3)原発立地の若狭にも、表立ってはいないものの、原発に不安を感じる声、脱原発を望む声は多数あることに鑑み、その顕在化を図ること、を掲げている。
そのためには、今までタブー視されてきた脱原発後の社会を展望する議論を日常茶飯事にしなければならないとの見地から、一昨年7月高浜町で、昨年6月美浜町で、本年8月高浜町で開催してきたシンポジウム「原発にたよらない町づくり」を拡大し、「原発のない町づくり」運動に発展させなければならない、としている。原発電力の消費地・関西および原発立地・若狭での原発全廃運動と「原発のない町づくり」運動を両輪として、脱原発社会を目指している。
そして、同会は12月3日に、おおい町で現地集会とデモを行う予定だ。13時におおい町総合町民センター大ホール集合で、大阪や京都からもバスが出る予定だ。大阪の市民は関電本店前で毎週金曜日11時~19時まで抗議集会を行っており、11月17日は20時過ぎまで夜の特別集会も行う。多くの参加が呼びかけられている。(編集部・村上、園)