「ミナセン尼崎」代表 弘川よしえ
編集部:自民党の「大勝」です。安倍政権は信任されたのでしょうか?
弘川:選挙の争点である、(1)消費税増税、(2)モリカケ疑惑の追究、(3)原発再稼働について、街頭で2日間にわたってシール投票をしました。回答者は50名ほどでしたが、いずれのテーマについても、安倍首相の主張に沿った投票は1割にも満たない数でした。ほとんどの人が、(1)消費税増税反対、(2)モリカケ疑惑の追究を続けるべき、(3)原発再稼働反対でした。この結果から見ても、民意と選挙結果には、大きなずれがあります。
自民党の「大勝」は、従来からある固定的支持層を最大動員した結果であり、希望の党の混乱を象徴とした野党分裂が、与党を利した結果だと思います。
編:選挙戦での市民の反応や印象的なことは?
弘川:尼崎選挙区(兵庫8区)は野党共闘が維持され、与野党対決の構図を作り出せたこともあって、選挙期間中は、手応えを感じていました。共産党の公認候補ですが、「市民と野党統一候補」を最大限アピールして、安倍政権への批判票や浮動票を取り込めたと思います。
ただし、投票率が低かったことにも見られるように、「どこに入れていいかわからない」という棄権者が、大量に出たと思います。尼崎では白票などの無効票数が14363票も出ました。棄権をするということは安倍・自民党政権を信任するのと同じだとどの程度の有権者が理解していたのでしょうか。自分と全く意見が合致した政党にしか投票しないのなら、多くの人は未来永劫、投票できないでしょう。政党、しかも固定観念化された単なるイメージで投票するのではなく、今回はどの政党、どの候補者に入れたら、自分の望む政治の実現により近づくのかということを考えて投票して欲しい、有権者側も変わる必要があると思います。
編:尼崎は例外ですが、全体としては野党共闘が機能しませんでした。ミナセンや野党共闘の今後と可能性は?
弘川:大事なのは、野党間共闘ではなく、市民と野党の共闘体制だからこそ大きな成果を生むことができるのだと思います。今後も、市民が主導して、立憲民主・共産党・社民などの野党共闘を進めていくべきです。
尼崎では、市民による活動を評価していただきました。政党が主導し前面に出る選挙運動ではなく、他党や党外の人もいるような多様性が確保される選挙運動は、民主主義を作りあげるうえでも重要です。その意味でも、市民と野党の共闘は、今後も発展させなければなりません。
編:選挙結果を受けて、野党の政党再編も予想されます。軸となる政策課題は?
弘川:改憲の流れが加速するのは明らかです。早ければ、来年通常国会で発議され、2カ月後に国民投票実施という日程も現実味を帯びています。
野党は、「改憲阻止」の一点で大きくまとまってほしいですし、野党を支える市民の力を大きくしなければならないと思っています。国民投票の場面でも、選挙以上の熱意を持って市民と野党の共闘を発展させねばなりません。
編:自民党が主導する「改憲」にどう対抗しますか?
弘川:安倍政権の政治路線は、新自由主義を進めて社会保障を切り捨て、自己責任を強調する一方で、愛国心を涵養して国家に役に立つような人間であることを私たちに求めるものです。改憲問題は、安倍・自民党政権が進めるこうした世界観の象徴です。これと全面対抗し、別の方向性を指し示すことがリベラル野党に求められているし、そうした大きなビジョンを共同で創りあげることができると、信じています。