福島事故による子どもの健康被害は一切「ない」と断定

日本学術会議「子どもの放射線被ばくの影響」報告書

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市民と科学者の内部被曝問題研究会会員 渡辺 悦司

 9月1日、「日本の科学者の代表機関」とされる日本学術会議が、「子どもの放射線被ばくの影響と今後の課題―現在の科学的知見を福島で生かすために」と題する報告書を発表した。

原発を推進した学術会議の犯罪

 学術会議は、1949年の発足以来、一貫して原発推進政策を先頭に立って進めてきた。その結果が、福島第一原発での重大事故と放射能汚染である。福島とその周辺諸県の住民、東京・関東圏の住民、ひいては日本国民全体を覆っている現在の被ばく状況である。
 著しく過小評価された政府推計でも、放射能の長期的影響を評価する際の指標とされるセシウム137ベースで広島原爆168発分。そのうち日本国土に降下したのはおよそ2割、約34発分である。つまり、学術会議報告が問題にしている「放射線被ばく」とは、いわば、学術会議自身が、原発推進に協力することによって、自分でつくりだした結果なのだ。
 学術会議報告は、「健康影響に関する科学的根拠」として国連科学委員会UNSCEARの見解に依拠するとしている。だが、UNSCEARの極めて過小評価された集団線量モデルによっても、極めて多数の人々の死が、現在までおよび今後の被ばくにより生じるとすでに予測されている(福島事故で約2200~7000人、帰還政策の完全実施で4600~1万5000人)。いわば「静かに進む住民の、とくに子どもの、大量健康破壊と大量死」というのが、現在の被ばく状況なのである。
 本来、原発推進に一貫して協力してきた学術会議は、事故を引き起こし国土を放射能で汚染し人々に莫大な損害と健康被害を与えたことに対して、共犯者として責任を問われなければならない。然るべき罰を受け、償いをしなければならない。つまり、学術会議報告が扱っている「被ばく」とは、学術会議自身の犯罪のことなのだ。
 ところが、驚くべきことに、学術会議報告には、この「被ばく」状況に対する科学者の責任、その「代表」としての学術会議の責任について、何の言及も、何の反省の弁も、被害者への何のお詫びの言葉もない。
 反対に、学術会議報告は、事実上、自分が重要な役割を果たした過ちの結果として生じている「子ども」の放射線被ばくによる健康被害の全てを、「科学」の名において「予測されない」と全否定する。事故による被ばくのリスクは、100mSv以下の「わずかなリスク」だから、「社会的に受忍しなければならない」と主張する。
 攻撃の矛先は「ゼロリスク」を求める住民に向けられ、「科学的知見」(事故健康被害ゼロ論)による「放射線リスク教育」の実施を求めている。自分の犯罪の結果として生じている被ばく状況と、それによる子どもと住民の大量健康破壊と大量死とを、恥知らずにも、「科学」の名の下に全否定し、国民に「受容」を要求し、「教育」という名の洗脳を実施し、自己の犯罪を隠し正当化しようと試みているのである。それは「科学」の仮面をかぶったデマ以外の何物でもない。
 日本の科学者の「代表」たる学術会議は、デマ集団に堕落してしまった。進んでいるのは住民の大量死だけではない。日本の科学の基本精神が、科学者の良心が、死に瀕している。今回の学術会議報告は「死臭ふんぷんたる」亡国の文書なのである。

嘘を信じ込ませるための報告書

 学術会議報告は、日本政府がこれまで主張してきた、福島事故放出放射能による健康被害全否定論(ゼロリスク論)を、「子どもの被ばく」の健康影響に押し広げ、さらには「子ども」への放射線診断・治療の被ばく影響にまで拡大することを主眼としている。同報告の主要な論点は以下の通り。
(1)子ども(学術会議は0~18歳を子どもと定義)の放射線感受性は成人の2~3倍。甲状腺の場合、乳児で8~9倍(最大29倍)であることを認めた上で、「標準人の実効線量の推定値として求められた実用量」(被ばく基準のこと)が、「子どもにとっても十分安全な推定値となっている」(つまり、「年20mSvで帰還」というような基準をそのまま子どもに適用しても構わない)。
(2)子どもについても「事故による放射線被ばくに起因し得るがん」が「増加するとは予測されない」(子どもの感受性が最大29倍あったとしても被害は出ない)。
(3)事故による「死産、早産、低出生時体重、先天性異常、遺伝性影響はみられないことが証明された」。「胎児影響」がないことが「立証された」。
(4)子どもの甲状腺がんの「放射線誘発がん発生の可能性は考慮しなくてもよい」。
(5)しきい値なし直線モデル(LNT、低線量でも被ばく量に比例してリスクがあるというモデル、UNSCEAR、ICRPなどの国際機関のリスクモデルの基礎)は、「科学的妥当性の検証」を行わなければならない(低線量ではリスクがゼロとなる「100mSvしきい値」モデルを採用すべきだ)。
(6)放射性セシウムについて「内部被ばくに比べ外部被ばくの方が(被ばく量が)はるかに大きい」「食品中の放射性セシウムから人が受ける放射線量」は「極めて低い」ので、「学校給食の検査には被ばく低減の効果はほとんどない」(廃止を示唆)。
(7)健康調査の検査結果は、子どもの「心に傷を負わせる」ので、「知らない権利」を尊重し、公表のあり方について「議論を深める」べきである(非公開の方向で検討すべき)。
(8)いろいろな「動植物の奇形」の報告は「流言飛語レベルの情報」である。
(9)「子どもへの放射線診断・治療の(高線量を含めての)適用が広がる傾向」があるが、これを推進するように、規制上も検討すべきである(放射線防護原則を1950年代のアリス・スチュアートの調査研究以前に戻すことを示唆)。

 もし報告が実施されれば、結果は放射線感受性の高い子どもたちへの集中的被ばくだろう。
 報告に対して、科学者や医師の中から、「学術会議の権威のもとウソを国民に信じ込ませるもの」「憤りを通り越して笑えてしまう」「インチキなだけでなく日本民族の滅亡に導く」という鋭い批判が上がり始めている。それは当然である。日本学術会議こそ、日本と世界の、「子どもの敵」である。犯罪者には、誰の目にも分かるように「子どもの大量虐殺者」という囚人票を貼り付けなければならない。

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