郡山市在住・原発いらない金曜日!郡山駅前フリートーク集会世話人 井上和男
福島は原子力勢力の治外法権
まず、筆者のツイートから――「隠された争点・・・#フクシマ 惨事報道管制」
「【ノーベル文学賞】村上ファンはガッカリでも、日系イギリス人、カズオ・イシグロ受賞は官民ともに歓迎したようだ。ディラン受賞も楽しかった。だが一昨年、『チェルノブイリの祈り』著者、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィッチの受賞はベタ記事扱いだった」。
「報道管制」は過剰表現、言い過ぎだろうか?
2011年3月11日、東京電力福島第一核発電所の放射能放出事故の直後、時の菅首相が発令した原子力緊急事態宣言は、12月に野田首相が核事故の収束を宣言したにもかかわらず、6年半後の今も撤回されていない。
そして、文部科学省は事故のほぼ1か月後、4月19日付け文書「福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について」を福島県知事・教育委員会あてに通達し、福島県内の子どもたちの年間被曝限度を20ミリシーベルトと定めた。
この特例措置を「国際的基準を考慮した対応」と言いつくろおうが、民間人の年間被曝限度を1ミリシーベルトと明記した電離放射線障害防止規則を無視する「超法規的」措置であり、根拠は事故後に届いた国際放射線防護委員会(ICRP)書簡だけである。
たとえば県境の南の茨城県では、公園の測定値が年間1ミリシーベルト限度を超える場合、立ち入りが規制されるが、福島県の市町村では除染事業が終了したとして、まったくお構いなし。福島県民は、憲法が保証する「法のもとの平等」を否定されている。
福島県は、ICRPをはじめ、国際原子力機関、世界保健機関、原子放射線の影響に関する国連科学委員会、放射線影響研究所など、国際原子力ロビーの治外法権地といっても過言ではない。
従順な姿勢の福島県民
そして、この年間20ミリシーベルト基準に基づいて避難区域が次々と解除され、住宅支援などが打ち切られ、避難民の生活保証が切り捨てられている。
事故直後、放射能「安全」ならぬ「安心」を説いて回った山下俊一・長崎大学教授(福島県立医科大学の非常勤副学長を兼任)は、5000億円の医療利権を手土産に福島県入りしたという。廃炉・除染・復興など、巨大事業も利権の温床といって間違いないだろう。
いくつかの賠償訴訟を除いて、たいがいの福島県民は従順な姿勢を保っている。三代目だという若い商店主は筆者の出席した座談会で、「現在の放射線値は安全だという専門家がいます。危険だという学者もいます。わたしがどちらかに賛成すれば、『中立』じゃなくなっちゃうでしょ」と語った。
筆者は唖然として、「放射能汚染はあなた自身の問題であり、子どもの健康にかかわる事態です。あなた自身が第三者的な立場を捨てて行動すべきじゃありませんか」と諭したが、わかっていただけたかどうか、自信がない。
もうひとつ例をあげると、2012年夏以降、毎週挙行している「原発いらない金曜日!」郡山駅前フリートーク集会で、バナーを掲げていた若い女性に中年男が寄ってきて、「オメェ、どこに勤めているんだ」と脅したことがある。
教育委員会だけでなく、商工会、医師会、地元新聞社など、(放射能と同じく)目に見えない戒厳令体制の構成機関は、多岐にわたる。
希望に合流し裏切った民進・玄葉
共闘が前進しても被曝の闇は深い
さて、衆議院選挙にまつわる福島県内の現況についてだ。
安倍首相のモリカケ疑惑追求回避のための「ワガママ」衆議院解散、小池都知事の「希望」を僭称する党の創設、前原民進党代表の「希望の党」合流表明に伴い、福島県でもリベラル派と目される女性候補も含めて、5区ある選挙区の民進党候補者の全員が、希望の党に公認を申請するような状況に、一旦はなった。
3区の玄葉光一郎前議員が、民進党の選対本部長代行として、若狭勝氏とともに候補者の調整に当たっており、これでは、昨年7月に参議院・福島選挙区で民進党の増子輝彦候補が現職法務大臣に勝利した快挙を後押しした、共産、社民、市民連合に対する裏切りになる。
毎日新聞福島版によれば、玄葉氏は「前原代表の大英断だ」と合流を評価、同氏の秘書は「地元の支援者も大半が歓迎ムード。『与党議員として活躍していたころの玄葉さんが、また見たい』という期待も大きい」と意気込んだという。
県民進は解散せず元議員を支援
ところが、1区の金子恵美・民進党前職が10月3日になって、安全保障関連法や憲法改定の必要性を認められないとして、希望の党には公認申請せず、無所属で立候補すると表明した。それに伴い、共産党は立候補者を取り下げたので、野党共闘が成立した形になった。
3区の玄葉氏も、なぜか希望の党の公認リストに記載されておらず、無所属になるようだ。残る2、4、5区のいずれも希望の党である。
今のところ民進党福島県連は解散せず、5人の元民進党員を分け隔てなく支援するというが、さてどうなることだろうか?
東京電力福島第一および第二核発電所のお膝元であり、郡山市に三菱電機工場が立地するなど、福島県は連合が強い土地であり、核事故時の佐藤雄平知事は連合と民進党の支援を得て、県知事選で勝利している。
子どもの被曝反対は一部野党のみ
余談だが、事故後に整備された郡山市内4か所の遊戯場について語りたい。外遊びの機会を奪われた子どもたちのために、市内各地に屋内遊戯場の設置が計画されていたが、「屋内の施設を作ることで、県外に誤った(郡山が危険だという)情報を発信することになる」という理由で、屋外遊戯場に変更された。
郡山市「2014年9月補正予算」は、子育て支援・教育振興関連経費として、整備事業の実施設計委託のために7100万円が計上されたが、反対討論に立ったのは共産党会派と市民会派だけであり、自民、民主、社民(!)各会派の賛成で可決された。 市議会レベルでは、保守と革新を問わず地縁・血縁のしがらみが強いようであり、このような事情も被曝地戒厳令体制を強固に支えている。
今回の衆議院選挙で野党と市民グループの共闘が躍進することを強く願うが、たとえ前進するにしても、フクシマ―惨事被曝地の闇は深い。
(筆者ブログ:「原子力発電・原爆の子」。ツイッター:@yuima21c)