9月15日、エルおおさかで「ピョンヤン宣言から15年 日朝国交正常化の早期実現を求める大阪集会」が行われた。この日の早朝に朝鮮のロケットが発射され、また日本中が「Jアラート」の警報と過剰報道に包まれる緊迫した状況だった。そのため会場には立ち見が続出する約150人が集まり、危機感と熱気に包まれた。
主催者挨拶は、何度も朝鮮を訪れ市民交流を行ってきた「日朝市民連帯・大阪」共同代表の大野進さんが行った。大野さんは「戦争の危機を止めるために、今こそ2002年の日朝ピョンヤン宣言の原点に立ち、まず国交正常化を行わねばならない」と訴えた。
確かにピョンヤン宣言では、「02年10月に国交正常化再開する」「日本側は過去の植民地支配によって朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのおわびの気持ちを表明」と書かれている。だがこの「歴史の事実」を政治家も世論も認めず、朝鮮への経済制裁をし続けている。最低限のスタートラインにすら立たない日本の姿勢が、今の状況を作り出している。
続けて康宗憲さん(「韓国問題研究所」所長)が、「最近の朝鮮半島情勢と日朝関係の展望」と題して講演した。
「朝鮮は水爆とICBMの実験に成功し、完成段階に入り、実質的な核保有国となった。核放棄を前提とした対話は拒否している。米国内部の論調も変化し、核を容認しながら、核・ミサイルの現状凍結を目標にしている。クラッパー元国家情報長官などは『北朝鮮にとって核は生存のチケットで、非核化は不可能。凍結が次善だ』と明言している。この現状をまず押さえねばならない。
朝鮮は、常に米国の攻撃の脅威にさらされてきた。94年のクリントン政権の先制攻撃検討。02年にブッシュ政権が『悪の枢軸』と打倒対象に名指す。オバマ政権は対話を模索したが、結局相互不信で決裂し、『戦略的忍耐』と称して交渉を拒否し、屈服を強要した。その前提は金正恩政権の早期崩壊の予測だったが、政権は続き、今や韓国以上に経済成長している。
そしてトランプ政権は『最大限の圧力と関与』と称して、『ハンバーガーから鉄槌まで全ての選択肢が机上にある』と言うが、それは有効な対策が無いことを表している。軍事的威嚇と経済制裁だけを続けるものだ。米国は朝鮮に大統領特使を派遣し、無条件での対話・交渉を行うしかない。『NYタイムズ』もそう直言している」
ありのままの朝鮮を知る努力
「大きな期待を背負って生まれた韓国の新政権は、残念ながら南北関係より韓米同盟を重視している。就任後に米・日・露・欧に特使を派遣したが、最も重要な平壌には派遣していない。7・1韓米首脳会談で朝鮮制裁決議の維持・強化を話し、韓米合同軍事演習を続けるなど、米国の圧力政策への同調を強めている。文在寅大統領は国内の民主改革は行えたが、金大中・盧武鉉政権のように南北関係を前進させられるような思想は少ないということだ。今は朝鮮の核・ミサイル開発中断を南北対話の条件につけているが、一切の条件をつけるべきではない。
日本の政治と平和運動は、より最悪の状況だ。こうした集会を積み重ねて、克服するしかない。まずは先入観と偏見に囚われず、『ありのままの朝鮮』を理解する努力から始めよう。そうすれば、体制転換という非現実的なアプローチから、相互に尊重し合った交渉による解決へ転換できるはずだ」
最後に、参加者一同が安倍首相宛の要請文を決議した。
「(1)日本政府は対米追従をあらため、朝鮮敵視政策と制裁を中止すること。(2)在日朝鮮人への迫害を中止し、ピョンヤン宣言に則って「法的地位」改善の努力をすること。(3)朝鮮高級学校に無償化を適用すること。(4)自治体が行っている朝鮮学校補助金打ち切りの圧力を中止すること。(5)国際人権規約を遵守し、7・28判決に従い日本における民族教育権を認めること。(6)前提条件なしで公式会談を開始し、日朝国交の早期樹立を行うこと」
要請文は首相に送られた。
今後も「市民連帯・大阪」の会合は月1回行われる。参加者の一部は翌日の梅田HEP前「解放区」にも参加し、集会で話された日朝国交正常化の実現と、朝鮮敵視政策をやめることを、雨の街頭に向けて訴えた。
(編集部・園)