朝鮮が求めるのは米朝平和条約 軍拡より国交正常化を

「Jアラート」大騒動 朝鮮との軍事衝突を煽る安倍政権

Pocket

李慈勲さん(ソウル書林)インタビュー
8月29日早朝、朝鮮が太平洋へロケットを発射した。21日から始まった米韓合同軍事演習(自衛隊も北海道で米軍と合同演習)に対抗したものだ。太平洋上に落ちたが、日本列島は大きな狂騒に包まれた。「Jアラート」が携帯電話に「ミサイル発射、頑丈な建物や地下に避難して下さい」と一斉に警報を鳴らし、テレビは全局が緊急特番に切り替わった。電車も止まり、事故まで起き、社会は混乱した。
 安倍首相は発射を予測したように前日から官邸に泊まり、緊急会見で「絶対に許さない」と強調。防衛省はさっそく来年度防衛予算に巨額のミサイル迎撃システムを組み込んだ。安倍政権は「危機」を煽り、単独先制攻撃も可能とする、憲法9条の破壊を行おうとしている。
 (韓国から独裁政権時代に来日し、)大阪の鶴橋で韓国・朝鮮の専門書店「ソウル書林」を営む李慈勲さんに話を聞いた。李さんは、政府や報道は朝鮮を悪魔化している。天皇制や自民党の二世議員など、戦争責任者の温存が根本的な原因で、今こそ変えようと語る。今号では今回の騒動の問題、次号で日本との歴史的な関係や今後なすべきことと、2号に分けて掲載する。(編集部)

戦前の翼賛体制に近づく日本朝鮮との約束を守らない米国

Q:なぜ今回の大騒ぎが起きたと思いますか?
 日本と韓国は、歴史的に米国の家来のような状態です。主権独立国家の機能が確立されていません。今思えば、オバマ政権の朝鮮に対する「戦略的忍耐」とは、米国の軍需産業を維持するための戦略でした。同じく日本でも、政府は急に「Jアラート」を使って市民の緊張感を高め、軍事予算を倍増させました。一機800億~1千億円のイージス・アショアの導入をすぐに決定し、オスプレイなども次々米国から購入しています。
 トランプ政権は、ユダヤ系の特定資本の体現者に過ぎないと思います。トランプの娘婿のクスナー自体がそうですから。トランプがヒラリーに勝てたのは、ユダヤ系資本のおかげです。彼らの狙いは、韓日に対して軍事的支配を続けるんだということがはっきりしたと思います。
 そして朝鮮を挑発し続けており、朝鮮も「その挑発への対抗策だ」と明言しています。
 本来、平和憲法を持つ日本は、米国の戦争を止め、平和のために動くべきです。しかし安倍首相などの支配層は、戦前の日本帝国主義時代に戻すことを狙っています。明治国家の偉大さ、日帝時代のアジア侵略を肯定的に考えているから、「自分の国は自分で守る」と称して、「対中国」を理由に軍拡をする。韓国あたりはその家来にする。そのために朝鮮敵視を煽り、軍拡を続けています。
 それが尖閣列島、独島の領土問題や沖縄の米軍基地問題に表れています。マスコミを統制し、市民もじりじりと吸い込まれている。これは1930年代の総翼賛体制の成立と非常に似ており、止めなければなりません。
Q:韓国ではどう受け止められていますか?
 もっと冷静です。日本のような大騒ぎはしていません。そんなことをしたら民衆は笑います。朝鮮が同族の自分たちを殺すことはしない、という信頼感と割り切りが根底にあると思います。文在寅政権誕生後も、米韓軍事演習は行われましたが、民衆は強く反対しています。政権交代しても南北関係が一気に変わることは特に難しいということですが、キャンドル革命を起こした市民は、平和的な統一を強く望んでいます。
Q:日米韓の軍事的包囲網の中で、朝鮮が今考えていることは?
 核実験とICBMの実験は、朝鮮半島の分断が原因です。分断の大きな要因は、(1)日帝の植民地支配、(2)ヤルタ体制、つまり戦後に米ルーズベルト・ソ連スターリンが朝鮮半島に進出し、軍事的境界線を作り出したことです。朝鮮戦争で、完全に2つの国家に分断されたうえ、同族どうしで争ったため、深い憎しみが生まれました(これは、深いところでアメリカの戦略だったと思います)。人間は、近い関係ほど喧嘩したら憎しみ合うものです。
 これにより、韓国は米国の傀儡国家のようにさせられました。一方朝鮮は、自主・独立の路線を歩まなければならなくなりました。米国は、朝鮮の政府の打倒を目指して、圧力をかけ続けています。  特に89年ソ連の崩壊以降、朝鮮は深刻なエネルギー危機におちいったため、原子力発電所を作り、エネルギーの自給自足をめざしました。これを見た米国は、原発から核爆弾を作るのではないかと疑心暗鬼になった。それで、94年に一瞬即発の戦争危機が訪れますが、米朝ジュネーブ会談を妥結してそれを回避し、国交を結ぼうという段取りになりました。
 しかし、米国はその約束を守らない。05年以降の6者会談で、朝鮮に重油を月5万トン供給する約束をしたが、反故にした。07年からは、対朝鮮の軍事訓練が行われ続けました。

朝鮮の真の行動理由が報道されない日本

 さかのぼれば、1957年7月に米朝は休戦協定を結びます。その核心は(1)敵対行為を中止し、(2)平和条約を結ぶことです。しかしいまだに全く履行されていない。また、外部から軍隊や武器を持ち込んではならないと約束したのに、韓国には継続的に米軍が駐屯しながら軍事援助している。75年には国連総会で韓国の外国軍撤退が決議されましたが、米国はそれも履行していません。その間米国は、韓国に戦術核を持ち込んでいます。一度持ち帰りましたが、再配備が目論まれています。
 このように、朝鮮がICBMの実験を行う歴史的な原因が、日本では一切報道されていません。それが憎悪と偏見を生み出す最大の問題です。
Q:緊張の中で、朝鮮の民衆はどのような状況ですか?
 90年代半ばの最悪の経済状況より、現在は良い生活が可能となっています。民衆は努力し、去年の経済成長率は3・9%。日韓より高いのです。また科学力、人材育成がなされ、国力は人々の努力の結果、増しています。軍事技術を驚異と叫ぶだけではなく、総合的な経済力を見るべきだと思います。日本の報道や日米政府の姿勢は、朝鮮を独立国として尊重しないことが根本原因です。
 日本には、朝鮮半島を支配し、分断した責任があります。次回はそこから何をすべきかを考えます。 (次号に続く)

Pocket

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。