本号1面を書いたガリコさんは、フェイスブックでも、エルサレム旧市街入り口で抗議するパレスチナ人を弾圧する、イスラエル兵の凄まじい映像を毎日撮って配信している。だが私は彼女の身の安全を心配している。
メディアは「暴動」と報道しているが、その脈絡を報道しない。抗議行動に投石はなかったかもしれないが、3人のイスラエル内パレスチナ人が待ち伏せしてイスラエル警官3人に重軽傷を負わしたのは事実だ。彼らは旧市街内に逃げ込んだが、イスラエル兵に殺害された。それを口実に数十年ぶりにムスリム聖地ア
ルアクサ寺院を閉鎖し、イスラム教の財産ワクフの管理者数十人を逮捕した。以来毎日「暴動」が続いている。
イスラエルには狂気的ユダヤ教徒集団「神殿運動」があって、これが先頭に立って右翼ユダヤ教徒集団とともにほぼ毎日のように、警察と軍の護衛のもとで、アルアクサ寺院侵犯を繰り返してきた。そしてモスクを破壊するぞとパレスチナ人を挑発した。「神殿運動」の目的は、アルアクサ寺院を破壊して神殿を建立することである。この宗教的シオニスト運動が国家と軍を支配、事実上の「神権政治」が行われていると言ってよいだろう。21世紀に紀元前515年の第二神殿に次ぐ第三神殿を作ろうというのである。「教
育勅語」復活願望をもつ安倍首相も顔面蒼白になる「壮大な」アナクロニズムだ。
今回の「衝突」で思い出すのは、1994年のヘブロン事件だ。米国からキルヤト・アルバ入植地に入った狂信的ユダヤ人バルーフ・ゴールドシュタインが礼拝中のパレスチナ人29人を虐殺した事件である。イスラエル政府はこの事件を利用し、ヘブロン旧市街、イスラム教とユダヤ教の共通の聖地であるマクペラ洞穴の支配を強化、イブラヒミ寺院を間仕切り隔離した。いわばアパルトヘイト構造にしたのである。
今回の衝突も同じように利用して、神話の宮殿を再建するようなことをすれば、世界中のモスレムは黙っていないだろう。