6月14日「Zコミュニケーションズ・デイリー・コメンタリー」チャック・コリンズ(政策研究所の研究者)翻訳・脇浜義明
5月4日、ソジョーナ・トゥルース社会変革活動家養成学校(訳注:ソジャーナ・トゥルースは19世紀の奴隷解放活動家)の開校式がスミス大学で開かれ、200人がベヴァリー・ダニエル・テイタム博士の講演に聞き入った。同校は、マサチューセッツ州西部の5都市で、活動家要請のための教育を行う。
スペルマン大学の名誉学長で、レイシズムに関する多くの著書で有名なテイタム博士は、「学校は、トランプ政権誕生による失望感から抜け出すために役立つ。普通の人々が学び、社会に影響を与えるようになる」と語った。活動や組織化に関するスキルを身につけたいという渇望がほとばしり出てきており、同校は、最近生まれた活動家育成学校の一つである。学校の共同設立者=アンドレア・アイヴァジアン女史は、「トランプの権威主義に抵抗する人々に有効なスキルを教えるポップアップ・スクールの実現が目標」であり、「トランプ時代に民主主義を守る拠点になる」と語る。
彼女が学校の発想を得たのは、空き店舗で開かれたポップアート・イベントだ。「一時的な学校を突然出現させたら面白いな」と思ったという。多くの人々が「場」を提供し、アーティスト・スタジオ、図書館ホール、コミュニティ集会所、教会などで学校が立ち上がった。
2016年、大統領選挙後には、選挙政治に身を投じる活動家が急増した。同時に、政治闘争に参加する人々を育てる組織への関心が高まりを見せた。VRLというNPOが運営する、女性に立候補方法を教えるコースには、7000人以上が参加した。トランプ就任式直後に生まれた学校 =レジスタンス・スクールの第1期には、17万5千人の志願者があった。同校はハーバード大学の院生が授業内容を作成し、ハリーポッター・シリーズで悪の魔法使いヴォルデモートに抵抗するためにダンブルドア軍団を作ったことに似せてアピールした。
燃え尽きを防ぐ継続的な学校活動
こうした動きは、公民権運動の際に誕生した活動家養成学校を思い出させる。1950~60年代、南部の諸州で市民権学校が設立された。64年には、ミシシッピー州で若者に文字と数学を教える基礎コースに加え、黒人史、市民参加概念、指導原理なども教える自由学校が、40以上誕生した。
教会の地下室や建物の裏庭や公園や木陰などで開かれるこれらの自由学校では、ボランティア教師の訓練も行われた。これら自由学校のいくつかは今でもシカゴやデトロイトで活動しているし、ニューヨーク州北部のモーホーク族居留地でも自由学校が続いている。
「私たちは別に新しいことをやっているわけではない」と、前出のアイヴァジアンは言う。「先人たちの事業を現在に合わせて復活させているだけだ」とも。
トゥルース学校への参加はすべて無償。教師への礼金は献金で賄うので、誰にでも開かれている。5・6月の初期コースは、演説・マスメディア向けの文章作成・歌唱指導・非暴力直接行動などの活動家スキルの学習である。さらに、ミレニアル世代(訳注:1980~05年に生まれた世代)への働きかけ方、政党・階級差を超えたオルグ活動などで、尊厳と自立・創造性が強調されている。
教授人の中には、政府役人やコミュニティ・オルガナイザーも含まれている。例えば、元議員のエレン・ストーリーは、「立候補の準備」というクラスを担当し、大衆運動家のジョー・カマーフォードは、「運動目標、戦略、戦術の構成」というテーマを担当する。他にも「それでも私たちは立ち上がる―黒人女性のためのリーダーシップ・フォーラム」、「抗議と抵抗の歌」、「精神的回復力と抵抗」などのクラスがある。
開校記念イベントの締めくくりにアイヴァジアンは、継続する運動の構築を訴え、「トランプへの反撃の最初の1年に全力投球し、燃え尽きて日常生活に戻るという危険がある。異常に慣れると、それが普通になってしまう」と締めくくった。「激発して燃え尽きることがないように、トゥルース学校が役に立つことを願っています」。