カヌー隊からの現地報告
辺野古カヌーチーム 山崎タヲル
「どうやったら止められるだろう?」─毎日そのことを考えている。2014年10月、県知事選挙の真っ只中に初めて辺野古を訪れ、カヌーチームに参加した。それ以来、時間をやり繰りしては地元関西から辺野古通いを続けていたが、昨年の春より名護市に移住し、働きながら仕事の休みに海に出たり、ゲート前に座ったりという日々を過ごしている。
辺野古埋立阻止!カヌー隊の行動
今、辺野古では、「実質的な埋立て工事」と言われるK9護岸工事が始まって一カ月あまり、一日に10㌧ダンプ数十台分の捨て石を砂浜から運び込んで海に投入するやり方で、護岸が一歩一歩沖へ伸び始めている。この捨て石によって、多様な生物や珊瑚を育む命の海がじわじわと殺されていることは言うまでもない。
その日に都合がついた仲間が集まる抗議船とカヌーによる海上行動チームはおよそ20名前後のメンバーで海へ出る。現在はK9護岸での捨て石投入への抗議・阻止行動が中心に取り組まれている。少しでも現場へ近づきたいと、護岸と私たちの間を遮るフロートのラインをカヌーで乗り越える。すぐさま海上保安庁のゴムボートが飛んできてカヌーを確保し、メンバーの身柄を拘束する。ゴムボートに乗せられ、現場から遠く離れたフロートの開口部を出て仲間の船へと引き渡されて、再び現場へ戻るには1時間以上が経過してしまうことも多い。
こうやって日に数回、現場に迫ろうと海保の高速ボートの隙を狙って手漕ぎのカヌーでフロートを越えることで、時にクレーンの動きが数分間止まったり、止まらなかったり。圧倒的な力の差を感じながらも、ただ指を咥えて見ていることはできない。抗う姿勢を示し続け、彼らの思い通りに作業を進めさせないことが大事だ。
一分一秒でもこの違法な工事を遅らせたい。その小さな積み重ねが大きな流れを変えることがある。
その一例として、今年になって大浦湾に設置された新型フロートがある。これは既存のフロートの浮き球に金属の支柱を取り付け、支柱にロープを張り巡らせて外部からの侵入を拒もうというものだ。
明るみになる杜撰な工事実態
しかし、波風の影響をまったく考慮せずに作られたこの新型は、たった1週間でロープが切れ始め、支柱が歪んだりひっくり返ったり、原形を保った箇所を探す方が困難なほどに次々と破損し、その補修作業が追いつかない有様である。
台風の接近時に避けられないフロートの撤去と、台風通過後の再設置を行う際には、支柱やロープがあるために従来の倍以上の手間と時間が必要となるに違いない。その間は作業が中断されることになる。これは、海上行動チームが粘り強く抗ってきたことが招いたひとつの成果だと言うこともできる。
頓挫したボーリング調査
護岸工事と並行して大浦湾で行われている作業に、ボーリング調査がある。海底に穴を開ける地質の調査だが、本来ならば本体工事に着手する前に終わらせているはずの事前調査である。偽りだった「和解」や、台風や選挙によっての中断が何度かあったとはいえ、数カ月で終えるはずの計画が遅れ、2014年8月のボーリング調査開始からやがて3年が経とうとしている。現在は三つのスパッド台船と二つのクレーン台船が、断続的に調査を続けている。
大幅な設計変更必至知事不承認で建設中止に
この遅れは、埋め立て予定地の海底地質に想定外の問題があることを示していると考えて間違い無いだろう。大幅な設計概要変更が必要となれば、その承認を左右する翁長知事の持つ権限が基地建設を止める大きな力となる。 2015年10月に沖縄防衛局が発表した辺野古基地建設の工事計画を改めて見てみると、県知事の許可が取れず全く見通しのたたない美謝川の切り替え工事をはじめ、浚渫工事、海上ヤード工事など、ほとんどの作業が手つかずで、防衛局の目論見とはほど遠い状況にある。時を重ねれば重ねるだけ、完成予定が先へ先へと逃げていく杜撰な計画であり、普天間飛行場の危険性を除去する代替施設として、これほど当てにならない選択肢はない。追い詰められているのは、むしろ彼らの方だ。
また、大浦湾の軟弱な地質では埋め立てを伴う基地建設は不可能だという地質調査の結果がもし見え始めたら、基地建設利権に群がる者たちは、どうせ計画が破綻するものならば、作業がゆくゆくは無駄になろうがお構いなく、必要以上の経費をかけてやれるところだけでもどんどん進めて、終わりが来る前に儲けれるだけ儲けてしまおう、という考えに陥ることは、想像に難くない。作業を行わないまま大浦湾に放置されているクレーン台船や、当初の作業手順を無視してとにかく急いで作ってしまおうとする護岸工事の進め方などを見ていると、この最悪のシナリオが進行しているのではないかという不安も日に日に募ってきている。
「どうやったら止められるだろう?」─この問いの答えはまだ見つけることはできない。しかし、希望はある。
この国で暮らす多くの人がこの問題を我が身のこととして捉え、「どうやったら止められるだろう?」と問い続けた時に、自ずと基地建設は止まるに違いない、と僕は確信している。