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福島から 健康被害・避難解除・止まらぬ不正

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 福島から、(1)健康問題、(2)除染問題、(3)避難問題の課題を、報告する。これらの問題はすべて連関するものだが、論点を明確にするため、分けて報告する。

(1)甲状腺がん多発

 まずは子どもの「甲状腺がん」です。2017年6月5日公表の、福島県民調査報告によるがん及び疑いのある子どもは、190人に達しています(調査人数は18歳以下の子ども38・5万人)。通常甲状腺がんは人口10万人に対し7人なので、人口30万人でも21人。福島県が異常に多いのは明瞭です。また、さらに深刻な問題は、急性心筋梗塞が死因別死亡率で福島県が男女共にワースト1位であったことです。
 以下、6月15日付『福島民友』より引用です。「厚生労働省は14日、5年ごとに実施している日本人の死因別、都道府県別の死亡率(人口10万人当たりの死亡数)に関する2015(平成27)年調査の結果を発表した。11年の震災原発事故後初となる調査で、福島県は都道府県別の急性心筋梗塞で男女ともワースト1位(10年の前回調査=男女とも1位)、脳梗塞は男性7位、女性5位(前回 男性5位 女性1位)だった。(中略)本県の死因別死亡率は、急性心筋梗塞が10万人あたり男性34・7人、女性は15・5人で全国で最も多い。脳梗塞は同男性22・8人 女性12・6人であった。もともと心筋梗塞が県民に多かったとしても、原発事故の風評として私たちの耳に入ってくる病死の情報は多い」。また、甲状腺がんの子どもは宮城県丸森町に2人、茨木県北茨城市で3人と、福島県の南北に拡大しております。

(2)ハザマによる除染の水増し請求

 6月19日、東京地検特捜部は、除染事業の水増し請求で東京の安藤ハザマ本社を詐欺容疑で家宅捜索した。『福島民報』は以下のように報道している。「建設会社の安藤ハザマ(東京)は9日、東電第1事故の除染事業で、作業員の宿泊費を改ざんするなどし、福島県いわき市と田村市に計8千万円を水増し請求していたとする調査結果を発表した。水増ししていたのは、両市の除染やモリタニングを行う事業。いずれも下請け業者に指示して、宿泊単価を増額させたり、人数を実際より多くみせかけたりしていた。水増し額はいわき市が約5300万円、田村市が約2700万円」。
 福島市でも除染箇所を竹林でないのに写真を合成して差額をだまし取る事件に加え、環境庁の出先機関である福島再生事務所の供応事件など、除染事業にまつわる不祥事は絶えません。当初、除染費用は2・5兆円と見積もられていましたが、現在では4~5兆円に膨らむと予想されています。当初から除染事業には、全国から集めた労働者の労働契約違反と使い捨ての違法就労が蔓延していました。これは氷山の一角です。すべての除染労働者の契約の点検が必要です。

(3)避難者と会おうとしない県知事

 避難区域からの避難者は、164、865人(2012年5月)から、60、179人(17年5月)に減少しました。
 今年3月31日には、「避難指示」が出されていた浪江町・飯館村・川俣町・富岡町の4町村で、一部を除き避難指示が解除されました。解除対象の住民は約3万2000人。残る避難区域は第1原発が立地する双葉・大熊両町近隣市町村の一部区域だけとなりました。2014~17年にかけて復興庁と福島県、避難指示区域の各市町村が実施した調査によると、浪江町・富岡町そして原発立地である双葉町・大熊町では、今後ふるさとに「戻らない」と決めている避難者は50%を超えています。
 避難指示が解除されて1年以上を経過した区域の帰還率は、田村市を除いて20パーセント以下にとどまっており、帰還の道のりは険しいようです。こうした事情もあってか福島県は、自主避難者に対する住宅無償提供を2017年3月末で打ち切りました。
 望んで避難した住民は1人もいないのが、原発事故です。東電をはじめ国・県・各自治体は、避難住民の要望を100%聞くべきです。そして、要望に沿った施策を講ずるべきです。内堀福島県知事は、県庁へ直訴に及んだ自主避難関係者とは一度も話し合いの場を設けていません。

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