シャーロット・シルヴァー(電子インティファーダー、6月13日)翻訳・脇浜義明
封鎖で傷めつけているガザに対し、イスラエルは6月12日、PA(自治政府)の要請だと言って、さらに40%の送電カットを決定。ガザの200万人は、1日に4時間しか電気を使うことができず、病院、海水淡水化施設、下水道処理施設などが操業不能に陥っている。まさに生存危機だ。世界の市民グループは、人道的立場から声明文や要求書を出す準備を進めている。(訳者)
イスラエルの人道団体「ギシャ」は「超えてはならないレッドラインを超えた」と非難する緊急声明を、アヴィグドール・リーベルマン国防相に送った。ハマスは送電カットを「破局的」で「危険な」決定で、「ガザ地域の状況を悪化させ、紛争激化を招く」と警告、「その責任はイスラエルと、PA大統領アッバスにある」と宣言した。
ハアレツ紙は、「ハマスへの寛大な姿勢をやめ、アッバスの要請に従って行動しよう」という軍部の勧告を伝えている。これは、敵対勢力(=ハマス)とガザ民衆を区別せず、政治的目的のために一般民衆に集団的懲罰を行っている現実を示している。ギラド・エルダン公安相は、電力カットはアッバスが決めたことで、「PAが支払わない電気料金をイスラエル人が払うことはありえない」と語った。
実施されれば破滅的な人道的危機をもたらし、軍事的緊張が高まることをよく知っている軍部や諜報部が、この措置を一番支持している。イスラエルは、アッバスの提案だと言って責任逃れをしているが、占領国としての責任は逃れられない。占領者に住民生活保護の義務を課すジュネーブ協定違反になるからだ。
事態の始まりは5月末、PAが、ガザ送電料金の支払いを60%に下げるのでガザ送電の40%をカットせよと要請したこと。PAのターレク・マシュマーウィ氏は、「ハマスが電気料金を支払わず、PA提案の議会・大統領選挙に同意しないから、電力カットに踏み切った」と言う。権力闘争に住民を人質に使うやり方である。
さらに、イスラエルの「人権医師団」によると、先月PAはガザの保健衛生のための資金をストップした。このため240人の幼児、数百人のがん患者やその他の重病人の治療ができなくなっている。PAはガザの統治をハマスから取り上げたいのである。
これに対しハーバード大学の研究者サラ・ロイは、「本当にそうしたいなら、ガザのハマス系公務員に給料を払うなどの行政的責任能力を示せば、住民はPA支持になるだろう」と書いている。ガザ封鎖を観察し続けている彼女によると、2007年選挙でハマスが勝利、それを認めないアッバス派がガザでクーデターを試みたが失敗。ガザがハマス統治になってからは、PA系公務員の給料もPAはカットしたという。
ハマスはこれまで、カタールからの援助に依存。カタールはガザ唯一の発電所の燃料を供給してきたが、そのカタールがイスラエル、米国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦から圧力を受け、ハマス援助どころではなくなっている。