奈良と大阪は生駒山系が隔てているが、その山筋を大和川が横切っているあたりに亀の瀬という一帯がある。ここは地すべりを起こして、過去に何度も大規模災害が起きたそうだ。地すべりによって大和川がせき止められてしまうと、奈良側に洪水が起きたあげく、最終的には土砂が決壊し、大規模な土石流が大阪平野になだれ込んでしまう▼それをくい止めようと、過去50年にわたって、上の土を削ったり、排水トンネルを掘ったり、地層を貫く巨大な杭を打ち込んだり、さまざまな工夫が施されてきた。結果、現在は地すべりは止まっている。大阪の人も奈良の人も、そのおかげで安心に暮らせていると言える▼私たちは、地面は止まっているものと思って生きている。でも、地すべりにかぎらず、地面は少しずつ動いていて、ときどき地震を起こしたりする。自分自身もそうだ。日々は、同じ自分と思って生きているが、成長するにしても、老いていくにしても、少しずつ変化している。そして、ときどき「地震」も起きる。そして「地震」は、止めることはできないものだろう。もちろん地すべりのように、人の力で抑える必要のある場合もあるだろうが、そういう「地震」を「病気」として、何でも抑えればいいとはかぎらない。「地震」には痛みをともなうが、それは可能性でもあるのだと思う。
(K)