免許更新・年金受給もできず 住民票削除 10年間放置
「10年も待ってるんだ! お前ら何も代替案出さないじゃねえか!」、「いつ実態を調査するんだ!」―大阪市に対する申し入れ現場で怒鳴り声が響いた。
3月28日、西成区・三角公園にて、釜ヶ崎公民権運動主催の集会・デモならびに大阪市に対する申し入れが行われた。以下、登壇者Aさんの集会での訴えだ。
―2007年に、2088名の住民票が消除されて、明日で10年が経ちます。10年前に大阪市が住民票を削除するときに、非常にショックでした。削除理由は居住実態がない。「住所がなければ、釜ヶ崎解放会館に行ったら住民票がおけるから解放会館にいけばいい」と、何十年間も労働者に言い続けてきたのは西成区役所です。住民票がなければ選挙に参加できず、免許の更新もできない。年金や給付金などの受け取りもできない。住民票はその人のもので、盗んだのは大阪市です。大阪市は責任があるにもかかわらず、知らん顔をしたままで逃げ切りを図ろうとしています。
大阪市・府は、あいりん労働福祉センター跡地に高級リゾートホテルを誘致することで、釜ヶ崎の街の解体をもくろんでいます。そうはさせない!釜ヶ崎は労働者の街で、ここに暮らしています。住民だから、住民票を置かせろ、盗んだ住民票を返せ!と。いい加減に泥棒行政を止めさせて、大阪市に謝罪させましょう!―
デモ後の大阪市に対する申し入れでは、「住民票を奪われた野宿者に対する救済措置を10年間放置してきたことを反省し、すみやかに対策を講ずること」を求めた。
2015年11月の大阪市長選当時、釜ヶ崎公民権運動が、大阪維新の吉村候補(現大阪市長)に質問し、貧困などを理由に住民票をもてない人が大阪市内に多く存在し、選挙権を行使できない状態が続いているため、改善のための施策について聞いたところ、維新の府議会議員団・富田氏は、(1)日雇労働者や野宿者が支援団体施設に大量に住民登録していたことは、住所がないと行政サービスが受けにくいための便宜的措置である、(2)マスコミが「集団架空登録事件」と騒ぎ、当時の大阪市が一律に住民登録を消除した、(3)対処のための代替案を用意しなかったことに問題があった、(4)実態調査を経たうえで代替案を講じていく、と答えた。
しかし、その後の吉村市政で代替案は講じられておらず、このため申し入れ参加者から冒頭の批判が相次いだ。また、大阪市は「居住実態の調査を確認した」と言いながら、実態は郵送で2回調査したのみで、住所要件について、民法の規定を付け焼刃のように回答するなど、これまでの申し入れに対する官僚答弁を繰り返すのみに留まった。(編集部)