安保関連法に反対するママの会/明日の自由を守る若手弁護士の会 弘川 欣絵
共謀罪法案が成立すると、例えばこんなことが起こります。
―お調子者で気のいい、高校生の息子が逮捕された。最近息子は10人ぐらいのグループに出入りし、よくコンビニで集まって話をしていた。その1人から、ある日、ライングループで、「夜8時にコンビニ集合」と送られてきたため、息子は「いいね!」のスタンプを押した。しかし息子はコンビニに行かなかった。この日、行った子たちは商店街の店の室外機を盗んでお金に換えようとして、店の前まで行ったが思い直して実行には移さなかったとのこと。後日、防犯カメラに移っていた子たちも息子も、「窃盗の共謀罪」容疑で逮捕された―
私の子どもも、思春期になれば親や学校に反抗して、少しやんちゃな友人と付き合うこともあるかもしれません。私は、自分の子どもに対して「自分の行動に責任を持ちなさい」と教えることはできても、「友人の行動についても連帯責任を持ちなさい」とは教えられないし、教えたくもありません。少しでもリスクのある人づきあいはやめなさいと言いたくありません。本来、他人を傷つけたり迷惑(利益侵害)をかけたりすること以外は、何をやっても何を考えても自由なはずです。一時期の感情で良からぬことを考えてしまっても、他人の立場や権利に思い至って踏みとどまれる心を人は持っていて、その信頼関係こそが社会の秩序や治安を維持しているのだと思います。私はこの信頼関係を否定し、社会に不信感を蔓延させるような共謀罪法案に反対します。
また、今、国家主義を推し進める政府は、「教育」に介入しようとしています。道徳の教科化が進められ、文科省の教科書検定で「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着をもつ」(指導要領)ため、道徳の教科書で「パン屋」が「和菓子屋」に書き換えられました。森友問題で明らかになったように、政府は教育勅語を暗唱させる森友学園を全力で応援していました。今後、「国家のために尽くす」人材育成が教育の現場で進む恐れが大いにあります。
また、学校教育だけでなく、家庭教育支援法案の成立によって、国家のための人材育成が各家庭で行われるよう家庭教育にまで介入してくる恐れがあります。私たちの、日々の、「あなたらしく生きてほしい」という祈りに近い子どもたちへの寄り添いや支援(それが子育てだと思っています)がかき乱され、子どもを混乱に陥らせることは絶対に避けなければいけません。そのためには、私はおそらく何だってやるでしょう。共謀罪法案が成立し、デモや学校への直談判を相談することも許されなくなれば、最終的に、国家のために犠牲になるのは子どもたちだと思います。
私たちは、まだ「共謀」ができるうちに、声を広げて大きく騒ぎ、多くの人と「共謀」し、この共謀罪法案の成立を阻止しなければならないと思います。