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この国に抗う笙野頼子『猫キッチン荒神』

国際サーカス村協会西田敬一


 〝文学で戦争をとめよう〟と宣言し、文壇から無視されている超絶技巧文章によって、次々と奇想天外な小説を書きつづけ叫びつづけている笙野頼子。3年ほど前に「いきなり激痛高熱消耗恐怖、たてなくなったんだよ急性憎悪」で膠原病と診断された彼女が「群像」4月号に発表した小説のタイトルが、このタイトルである。昨年末には、『植民人食い条約 ひょうすべの国』という、これまた、この国の人々が、為政者と企業の金賭けのために、すでに労働力のみならず生活そのものまでが資本の餌食になっていること、権力者という人種が他の人々を食い尽くす「人食いの国」になっていることを、いわば文学的創造力で徹底的に暴いた品を発表している。
 ぼくがガーンとやられたのは、文学者としての彼女が己のフィールドである文学の世界で、どんどん「人食いの国」化する、この国の流れに徹底的に抗っていこうとして、作品を書きつづけよう、そう宣言して作品を発表していることだ。
 自分がいるその立場で、明日にでも戦争をしかねないこの国の流れに異を唱え叫び行動すること。今の日本は生き地獄ではないのか。そう感じるのであれば行動せよと、自分の分野でと、彼女は己の世界・文学の世界で実践しているのである。『ひょうすべの国』の帯を、彼女はプラカードと思ってデザインしたとのこと。そこに書かれているひとつに、「病人殺すな赤ちゃん消すな!田畑無くすな奴隷になるな!」。
 ぼくのフィールドはサーカスなので、彼女に習えば、〝サーカスで戦争をとめよう〟となる。サーカスはボリショイサーカスや木下サーカスなどに代表されるように、大衆娯楽のひとつである。そこに〝サーカスで戦争をとめよう〟と問題を投げかけても、首を傾げられるどころか、追い出されかねない。となれば、既存のサーカスの形ではなく、それ以外のサーカスの表現のあり方を見つけなくてはならない。

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