春めくこのごろ、あたたかな陽射しに湿度のある空気、地面からは緑が萌え出で、小鳥たちはにぎやかにさえずり、さまざまな生き物のうごめきを感じる。身体がゆるむとともに、冬が終わるんだなと安堵を覚える▼しかし、一方で春先は、一年で一番しんどい季節のように思う。私は若者の居場所に関わっているが、とくに若い人にとって、身体がゆるむ季節は身体が不安定になる季節でもあって、精神的にも不安定になりやすい。くわえて4月は、進学やら就職やらで、みんながいっせいに動きはじめる時期でもある。ざわざわと不安な気持ちがうごめき、ときにそれは、まがまがしく吹き出してしまう▼でも、それも生き物の摂理として必要なことかもしれないと思う。誰しも、生きていくうえで溜め込んでしまう、どろどろとした気持ちや、癒えない傷や、不安な気持ちはある。ふだんは見ないことにして抑えているものの、それらのものは出口を求めてもいる。「ナイルの恵み」ではないけれども、まがまがしい気持ちが、ときどき洪水のようにあふれることがあって、でも、それがもたらす恵みもあるように思う▼とはいえ。そばにいる人はたいへんにちがいない。ややもすると濁流に呑みこまれてしまう。吹き出すのを抑えようとせず、呑みこまれもせず、この不安定な春をともに過ごしたい。(K)