京都地裁、闇討ち不当解雇で判決へ

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浅野教授追放の首謀者小黒教授が偽証連発

佐竹純一(ジャーナリスト)
 浅野健一・同志社大学大学院社会学研究科メディア学専攻博士課程教授が2014年3月末、学校法人同志社(水谷誠理事長)による定年延長拒否=解雇という形での〝だまし討ち〟〝暗黒裁判〟で不当解雇されて3年が経った。
 同大では1951年以来、大学院教授は70歳が定年だが、浅野氏は院教授として不適格として65歳で解雇された。同大で初めてのことだった。浅野氏は14年2月3日、同志社を被告とし、京都地方裁判所第6民事部(堀内照美裁判長)に従業員地位確認等請求訴訟を起こし、これまで15回の口頭弁論が開かれ、3月1日午後1時10分、地裁203号法廷で判決が言い渡される。
 浅野氏の追放を謀議したのは、同僚教員6人(渡辺武達名誉教授、小黒純・竹内長武・佐伯順子・池田謙一各大学院教授、河崎吉紀・学部准教授=浅野ゼミ2期生)と冨田安信社会学研究科長(当時)だ。この7人を背後で操ったのが、安倍晋三首相に近い村田晃嗣学長(現在、法学部教授)ら当時の大学執行部だ。
 小黒氏らは13年8月から、同志社の代理人である小國隆輔弁護士(大阪・俵法律事務所)らを雇って排除作戦を進めた。小黒・竹内・佐伯・池田各氏は13年10月30日の社会学研究科委員会(教授会35人)で、20年間教授を務めた浅野氏を〝不良教授〟と非難した「浅野教授定年延長審議資料」を配布し、定年延長反対の演説を行った。
 この怪文書には〈大学院教授としての品位にかける表現例「労務屋」「メディア企業御用学者」「デマ」など〉〈専攻科の各教員は常時強いストレスにさらされている。文書送付等が顕在化しているときは勿論、その後も長く続く恐怖感。これによる突発性難聴や帯状疱疹などの発症〉などの記述があった。
 浅野氏は地位裁判とは別に、この4人と渡辺氏を相手取って京都地裁(久保田浩史裁判長)に名誉毀損・損害賠償訴訟を提起。また、冨田氏を被告とする損害賠償請求訴訟を神戸地裁に起こしている。

浅野氏を菌扱い

 怪文書裁判の証人尋問が1月12日、京都地裁で開かれ、原告の浅野氏と渡辺・小黒両氏が証言した。大分「みどり荘事件」の冤罪被害者、輿掛良一さんらが傍聴した。
 渡辺氏は浅野氏の代理人である弘中惇一郎・山縣敦彦両弁護士の追及に対し、「(浅野教授の定年延長について)全く関心がなく、何も関与していない」と言い放った。
 小黒氏は主尋問では、浅野氏非難をなめらかに述べたが、山縣弁護士の反対尋問では、言葉を見つけるのに必死だった。「当時、博士後期課程教授ではなかったあなたに、浅野氏の研究教育業績を云々する資格があるのか」という山縣弁護士の質問には、「謙虚に答えなければなりませんが、…、あると思います、ということにしておきましょう」と答えた。ゼミ学生に労務を強制したという陳述書(16年12月20日=地位裁判結審の日)の記載について、「人数は何人か」「学生から聞いたのか」という問いには、「覚えていない」などと答えた。
 小黒氏は「(浅野氏支援者で)タドコロと名乗る人物が、私に対し『あなたは人の首を切って平気なんですね』と脅迫した。何らかの危害が加わられるのではないかと思い、怖かった」などとウソの証言をした。
 浅野氏がゼミ学生に労務を強制したとか、「原告がいることで、私は帯状疱疹に罹った」などと証言した。精神科医の野田正彰氏は「帯状疱疹はヘルペス・ウイルスによって罹患するものであるから、浅野教授が『菌』だと言ったのと同じだ」と批判している。
 この裁判では、怪文書の作成経緯が焦点だが、小黒氏は「文書は手控えとして持っていた」と証言。しかし、冨田氏は昨年9月、地位裁判の証言で「小黒先生から配ってほしいと渡された」と述べている。
 小黒氏は最初、「どこを誰が書いたかは覚えていない」などととぼけていたが、「誰のパソコンで打ち込んだのか」という問いに、「私です」と回答。主犯は小黒氏と分かった。
 小黒氏は陳述書で、浅野氏が「自らの主義・主張、政治的信条を前提とした講義が行われている」などと非難。浅野氏が講義概要で福島原発報道が「大本営発表」だったと指摘したことも「意図的な曲解で教育者として極めて不適切」と断言している。小黒氏が同大の教壇に立っていることに問題はないか。
 怪文書裁判は4月13日の次回期日で結審し、判決が7月ごろに出る予定。
 弘中弁護士は裁判終了後の報告会で、「名誉毀損訴訟では、被告側に真実性、公共性、公益性を証明する義務がある。裁判所は、今回の3人の証言で名誉棄損の事実関係の調べは十分と判断したと思う。特に小黒氏が中心になって怪文書を作成したことが証明されたのは成果だ」と説明した。

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