いま米国では トランプの大統領就任を前に

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翻訳・脇浜義明

拷問とイスラエルを支持する次期CIA長官

 

11月22日「電子インティファーダ」マイケル・ブラウン

 カンサス州下院議員で「ティー・パーティ運動」のマイク・ポンペオは、トランプ次期大統領からのCIA長官就任要請を受諾した。彼は福音派キリスト教徒右派強硬派で、下院情報委員会の委員である。上院の承認を得て長官になれば、「CIA機関を拡大する」と言っている。
 彼は、ネオコンのシンクタンク民主主義防衛財団の上級研究員のディビッド・リブキンJr.と『ウオールストリート・ジャーナル』で論説を書き、「調査に対する法的・官僚的制限を除去すべきだ」と論じた。2人はメタデータ(データに関する属性情報を記述するデータ)・コレクションを復活させ、それを金銭関係や生活情報と結合して、検索可能な包括的データベース化する法律制定を下院に要請した。
 『ネーション』によれば、彼は「イラン核協議合意に猛烈に反対し、ムスリムによる脅威を掻き立て、グアンタナモ湾収容所封鎖に反対、国家安全保障局(NSA)の監視政策を『重要な任務』として擁護したタカ派」である。また、エネルギー・コングロマリットのコーク・インダストリーズ経営者で極右のコーク兄弟と親しい人物で、NSAの悪事を内部告発したエドワード・スノーデンを処刑せよ、と主張している。
 米国内のムスリムとモスクの監視を奨励するトランプは、イスラエルの人種プロファイリングを、「米国が犯罪捜査で採用すべきモデル」として賞賛した。ポンペオも、パレスチナ人を処刑するイスラエル警察の暴力を賛美した。
 昨年12月、ポンペオはイスラエルとレバノンを訪問、「私は、アラブ人の無垢のイスラエル民間人や警官への途方もない暴力行為を知った」と言った。しかし、イスラエルの占領、パレスチナ人を差別する法律、イスラエル警察がパレスチナ人に加える圧倒的暴力には、一言も触れなかった。「ユダヤ教徒というだけでイスラエル人が攻撃されているビデオを見た」と言って、パレスチナ人の占領への抵抗運動を宗教的偏見にすり替えた。「イスラエル警察は理不尽で残酷な攻撃をよく辛抱しているなと思った。イスラエルの友人として、私は彼らのプロ根性を賞賛する」。
 しかしその年の秋、イスラエル軍と武装した民間人は、パレスチナ人デモ隊に対して殺傷力の強い武器を使い、拘束した無抵抗なパレスチナ人を即座に処刑した。イスラエルの人権団体は、「軍人、警官、武装民間人が裁判官と死刑執行人になった」と非難した。アムネスティ・インターナショナルはこの事件の調査を要求し、ある米国上院議員は、10人の下院議員と連名で、「イスラエルとエジプトの治安部隊による人権侵害を調査せよ。米国が援助した武器が人権侵害に使用されている懸念がある」と、国務省に要請した。
 ポンペオの外交政策を、彼のウェブサイトから引用する。「米国は…世界中の同盟国─とりわけ中東の民主主義国イスラエルと結束し続けなければならない。米・イスラエル同盟は、国際安定と地域安定の要石である。イスラエルは中東で進歩のモデルとなる国家で、米国はイスラエル国を支援し続けるべきである」。

差別と暴力による「法と秩序」

 ポンペオのイスラエル警察賞賛は、トランプが選挙期間中に口にしていた「法と秩序」と合致する。トランプは人種的偏見と差別意識に基づいて、ラティーノ、黒人、ムスリム地区での警官のデモに対処するやり方が批判されるようであれば、どうやって「法と秩序」を維持できようか、と問いかけた。彼は、警察友愛会のアンケートに「軍事武器の地方警察への移転を制限するオバマの大統領令を取り消す」と答え、「武器移転は、地域の治安を高めるよい策である」と付け加えた。
 また彼は、「水責め拷問は法の許容範囲」と言った。トランプも、「水責め拷問やテロリストの家族の殺害を支持する」「水責めより効果的な方法をたくさん復活させる」とも発言しているので、拷問の復活が懸念されている。トランプとポンペオが提起する拷問は、イスラエル政府が行っているものと合致する。
 「憲法上の権利センター」のパーディス・ケブライエイが、グアンタナモのハンガーストライキがあった時に、参加者への強制的な栄養注入を批判した時、ポンペオは、トランプの女性蔑視的言葉を使って、「あの女が何を言っているのかさっぱり分からん」と言った。そして「ハンガーストライキというが、あの連中は結構太っているじゃないか」とあざ笑った。
 グアンタナモで強制的栄養注入を受けたサミール・ナジ・アル・ハッサン・モクベルが「ニューヨーク・タイムズ」に語った言葉を引用する。
 「奴らが私の鼻に栄養注入チューブをねじ込んだ時のことは、今も覚えている。その痛さは言葉で表現できない。チューブがねじ込まれるとき、痛いばかりか吐き気がした。吐きたいのに吐くことができないので、死ぬ思いだった。胸、喉、胃が捻れるように痛かった。あんな苦痛は初めてだった」。

米軍2万㌧の重金属と爆薬を海洋投棄

 

11月15日「truthout」truthout記者 ダール・ジャメイル
 米海軍は軍事演習で、長年にわたり爆弾、重金属、ミサイル、ソナーブイ、爆薬、劣化ウラン弾などを海洋投棄してきた。最近、海軍自身が、米国沿岸海域に、幼児の脳にとって有害とされる化学物質や劣化ウラン弾を捨てたことを認めた。
 また海軍の公文書によれば、今後20年間で2万㌧の重金属、プラスチック、その他毒性が強い化合物を演習で海洋投棄する計画である。
 海軍の2015年ノースウェスト訓練・実験環境影響報告(EIS)によれば、海軍が毎年行う数千件の交戦「実験・訓練」では、ミサイル、魚雷、大砲、その他の爆発物発射のために20万の「ストレス要因」が海域に影響を与える。これらの「ストレス要因」が、ドローン、軍艦、航空機、砲弾、バッテリー、電子部品、金属表面を覆う錆止め化合物質と並んで、海軍が重金属と有毒性物質を環境へ流し込む媒体となっている。
 その有毒物質の一部を列挙すると、過塩素酸アンモニウム、ピクリン酸、ニトロベンゼン、ソナーブイのバッテリーから流れ出すリチュウム、鉛、マンガン、リン、硫黄、銅、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、バナジウム、トリニトロトルエン(TNT)、トリメチレントリニトロアミン(RDX)、高融点爆薬(HMX)、などである。
 「こういう化学物質は、私たちが依存している海洋食物網にはないものばかりだ」と、「西海岸アクション・アライアンス」(北西太平洋での海軍の活動を監視する環境保護団体)の共同設立者で、絶滅種研究者のカレン・サリヴァンが言った。「海軍は汚染を洗浄する気もないし、健康被害を受ける可能性がある人々の健康チェックに協力する気もない」。
 米国民が軍の環境汚染の巻き添え被害を受けた例は、たくさんある。10月、空軍基地から有毒化学物質が下水道に漏れたことを、BBCが報道した。海軍はサンディエゴ港に有毒化学物質の地下ブルームを港湾近海に放棄してサンディエゴ湾を汚染、連邦裁判所では係争中だ。これらは氷山の一角にすぎない。
 このまま放っておくと、米国沿岸海域は、今後20年間で有毒化学物質汚染で回復不可能な環境破壊に冒されることになるだろう。
 「過去50年間で米軍事支出は、東南アジア、アラブ世界、中央アジアで何百万人もの虐殺を引き起こした」と、環境毒物研究者のモズカーン・サワービァスファハーミー博士は言う。「人間の虐殺に加え、ベトナムからイラクにかけて環境破壊と異常出産をも引き起こした」。
 米国の主流メディアも、彼女の言葉を裏付けている。2014年、ニューズウィーク誌は「米国防省は世界有数の汚染源」と題する記事を載せた。
 「米国防省は、世界最悪の環境汚染源である。軍の環境破壊は、企業の汚染とは比べ物にならないほど巨大である。4127の基地が米国土の1900万エーカーを覆っており、国防省の環境対策を担っているモーリーン・サリバンは、39000の汚染地対策で忙殺されている、と語った」。
 1990年、国防省は米軍が地球全体で14000箇所の汚染地を作り出したことを認めている。
 米国の安全飲料水法は、「汚染」について、「水中に物理的、化学的、生物学的、放射線的物質が混入すること。飲料水にそのような物質が微量混入することはあり得る。程度を超えて飲用すると害になるかもしれないが、そのような物質の混入が、必ずしも危険を示すわけではない」と規定している。つまり、汚染は「量」の問題で、政府は「限度」を設定して人体の安全を守れる、としているのである。
 しかし、それは管理された飲料水の中の異物混入のことであり、米海軍が環境に垂れ流す有毒物質を考慮に入れたものではない。「大量の汚染物質が海洋にあってもよいが、飲料水の中になければよい、とでもいうのだろうか」と、15年以上も米国魚類野生生物局に勤務している研究者が言っている。「汚染とは、汚染物質を除去する適正処理をされずに水の中に直接・間接的に放出されて、環境悪化を引き起こすことだ」と研究者は語り、海軍が有毒物質を処理することなく海洋に放出している事実を指摘した。
 海軍は、「除染費用が高くつくためにそのまま海洋放棄しているので、今後もそうする」と言っている。「海底に沈んだ劣化ウランは、他の物質と同様に危険ではない」と、海軍広報官のシーラ・マレーは海洋汚染の責任を否認した。
 サワービァスファハーミー博士は、すでに生態系の生物多様性が減少していることをこう指摘する。「海軍の環境破壊にともなって、地球温暖化、種の大量絶滅、生態系崩壊、食物網変化、有機体の物理的・生物学的変化、内分泌撹乱、子どもの神経発達障害などが起こる」。

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