韓国ドラマ『根の深い木』で、王と対抗勢力「密本」の指導者が意見を闘わせるシーンがある。王が民に字を与えることで貴族や官僚の特権を掘り崩して民の社会にしていけるというと、密本指導者は、政治的リーダーには民のために決断してよい結果を残す責任があるのであって、民に決める権利を与えていくのは、政治リーダーの責任からの逃避だと批判する▼王が、庶民が字を得ることで儒教などもみじかになり、かえって道徳レベルかあがるというと、密本指導者は、庶民の道徳レベルがあがるのではなく、欲望のふたを取り払って欲望の暴走をもたらすことになる、科挙という試験を通ったエリートが支配することが結局民のためになるのだという▼この論争は、いまの社会の政治を、エリートが指導していくべきか、民衆が主体的に政治を行う道を追求するべきかという話につながる。簡単に後者がいいといえないのは、大衆は時には欲望のためにひどいことをする現実があるからだ。ドラマでも、民のためというが、民に字を与えるのは犬に言葉を理解させることに過ぎず、言葉を理解する犬は支配しやすいのだと。字の普及はそのようなものになるだけだと王を批判する▼今、メディア操作で簡単に大衆は、トランプや安倍や橋下などに喝采を送るという状況があるので、民主主義だ!というだけではことは解決しない。韓国ドラマは権力について本気の問いかけをしてくることがある。 (H)