8月24日付「電子インティファーダ」
モーリーン・クレア・マーフィー
翻訳・脇浜義明
8月23日、ナブルスでパレスチナ自治政府(PA)保安隊が抑留者を撲殺した事件が起こり、パレスチナ解放戦線各派や人権団体が抗議デモを行った。
アハマッド・アッザト・ハラワ(50)は、明け方自宅で逮捕され、PA本部へ連行された。そこでハラワは保安隊員と口論になり、撲殺されたのである。人権団体は、これは8月18日にナブルスで起きた、2人のPA保安隊員の殺害事件への「不法な報復行為」だと批判。
保安隊のスポークスパーソンであるアドナーン・ダミリは、人権NGO「アル・ハク」に、「ハラワは保安隊員殺害事件に関する容疑者だ」と説明した。ハラワはファタハの武装部門「アル・アクサ殉教者団」の著名な指導者で、18日以降に保安隊によって殺されたのは、彼で3人目の犠牲者になる。
パレスチナの囚人の人権グループ「アッダミール」は、この殺人を「政府のリンチを例証する拷問行為」だと非難した。国連人権高等弁務官事務所のジェームズ・ヒーナン所長も、「『明らかに裁判なしの死刑』に対して、国連は非常に危惧している」と語った。PAの与党であるファタハの多くの人士も、抗議の辞職を行った。ハラワの家族も、「人命の尊厳を無視する冷血な殺人」と怒りを露わにした。
ハマスのスポークスパーソンであるサーミ・アブ・ズフリも、「裁判なしの現場処刑方針」だとしてPA保安隊を非難した。ズフリは、「この犯罪は、占領軍との治安協力(保安隊とイスラエル軍との協力を指す)を超えるPAの残酷な性格を表している」と表明、「その責任はファタハの指導者たちにある」とした。左派のPFLP(パレスチナ解放人民戦線)は、この事件に関する調査委員会の結成を呼びかけた。
数百人規模の抗議デモがナブルス市内を行進し、ラーミー・ハムダッラーPA首相、ナブルスのアクラム・ラジューブ市長、ニダル・アブ・ドゥハーン保安隊司令官の解任を要求した。しかしデモ隊は、保安隊の催涙ガスで追い散らされた。
18日の保安隊員殺害事件は、保安隊による抵抗運動活動家からの「刀狩り」がその原因である。8月21日、アドナーン・ダミリは、「不法な武器所有がなくなるまで」保安隊は抵抗活動家の逮捕活動を続ける、と発表した。保安隊がハラワを逮捕したとき、イスラエル軍はヨルダン川西岸地区南部で武器探し大作戦を展開した。イスラエル軍は「武器工場7箇所、54丁の拳銃、武器製造用旋盤22台、その他武器用部品などを発見した」と発表。2016年元旦以来、イスラエル軍は29カ所の武器工場を襲い、49台の旋盤と300丁も武器を押収した。
昨年10月から始まったユダヤ人入植地やイスラエル兵への攻撃では、いろいろな手製武器が使用されている。時には、イスラエル軍と共同治安活動をやっていた保安隊員が、個人として、イスラエル兵に銃口を向けることもあった。ナブルス地区保安隊員のアムジャッド・スッカリーは、VIP専用のチェックポイントで支給された拳銃でイスラエル兵に発砲し、殺害された。イスラエル紙「ハアレツ」は、この事件を「数カ月間イスラエルを悩ませた悪夢」と表現した。
イスラエルは、米国とEUの支援を受け、PAが軍事占領に対する抵抗を抑えることに依存している。実際、テロ容疑者とした逮捕した者の40%までが、PAが逮捕したのである。おかげでイスラエルは、西岸地区での軍事作戦を大幅に減らすことが可能になったのである。