ミナセン尼崎・弁護士 弘川よしえ
昨年の夏、安保法制の審議で市民の反対の声が大きくなる中、よく賛成側の陣営から言われたことがある。「デモをするぐらいなら選挙に行け」。慎重審議すべきという意見も含めて、安保法制に反対する市民は6割にのぼったのに、衆議院で3分の2、参議院で過半数の議席を持つ与党により、安保法案は押し通されてしまった。政治は、少し前に行われた選挙による議席配分で決まるのだと思い知らされた(しかも、選挙の争点になっていないことでも)。強行採決の国会中継を見ながら、それならば選挙で勝って安保法制を廃止しようと心に誓った。
全国各地でミナセンが立ち上がる
安保法制が成立して、選挙を意識し始めたのは私だけではない。昨年秋頃から全国各地で反対の声をあげていた多くの市民が、参院選に備えて選挙の勉強会を開催し始めた。そして、選挙の難しさや野党票が割れている現実など、危機感を共有した市民たちが、次々と選挙に取り組むための市民グループを立ち上げていった。
昨年12月、真っ先に結成されたのは、ミナカナ(ミナセン神奈川)というグループだ。「ミナセン」はみんなで選挙の略であり、野党共闘の要請や、野党の選挙応援など、投票へ行くだけでなくもっと選挙に主体的に取り組もうという意味が込められている。各地でそれぞれ自発的に生まれたこれらの動きは、それぞれ結成の経緯やメンバー構成は違ったが、同じ趣旨の取り組みであること、全国的な動きであることを可視化するため、多くのグループが「ミナセン」という名前を付けるようになった。
そして、1月22日に、参議院議員会館でミナセン全国集会が開催され、約30のミナセン(グループ名はミナセンに限らない)が交流し、300人以上が参加した。
各地のミナセンは、フェイスブックなどのSNSでゆるやかにつながり、取り組みや選挙情勢についての情報交換や、ミナセングッズの共有など、地域を越えて互いに活動を補完し合っている。
現在、全国では100以上のミナセン(同趣旨のグループ含)が活動をしている。関西、特に兵庫県内では、1月30日にミナセン尼崎、2月には連帯兵庫みなせんが結成され、その後、兵庫1~9区でミナセンがほぼ結成された。5月と6月には、野党5党と市民の共同街宣を実現させた。また、大阪では3月にミナセン大阪が結成され、街宣車ミナセン号を走らせたり、ミナセン大阪TVという動画を作成するなど、ユニークな活動を展開している。
希望はここに!風よ吹け!
私自身、1月にミナセン尼崎を結成し、また連帯兵庫みなせんのメンバーとして、試行錯誤しながら市民として選挙に取り組んできた。立憲主義を取り戻し、安保法制を廃止するためにひとつにまとまる野党と市民──。まだ完成形には遠いかもしれないが、このミナセンの風は、この国に民主主義を根付かせる一縷の希望であると、私は信じている。