イスラエル批判者を処分に追い込む党内政治

英国労働党内の魔女狩り

Pocket

翻訳・脇浜義明

 ジェレミー・コービンの指導で、先週の地方選挙で予想外の好結果を出した英労働党内で、イスラエル批判者に対する魔女狩りが続いている。先日の犠牲者は、南ロンドン区党書記長デービッド・ホワイトだ。彼は、《ナチ党がドイツ・シオニズム運動を支持した》という歴史的事実に関する元ロンドン市長ケン・リヴィングストンのコメントが「概ね正確」というツイッターをしたために、停職処分にされた。
 先週の選挙までの間に、親イスラエルである反コービン右派は、「党内に反セム主義がはびこっている」というデマをでっち上げて、コービン指導部を揺さぶるキャンペーンを行った。労働党全国執行委員会からコービン支持の左派を追いだそうとしているのだ。左派によるイスラエルの占領政策批判をユダヤ人差別にすり替えて、「党のコンプライアンス違反だ」と難クセをつけて、停職処分に追い込むのだ。
 ユダヤ人左派でさえこの犠牲者となった。ジャッキー・ウォーカーという女性は、停職処分を招いたイスラエル批判を撤回する気はないし、「今後も発言を続ける」と言い切った。
 彼女は反レイシズム活動家で、イスラエル批判者である。彼女がフェイスブックに書いたことを、親イスラエルの『ジューイッシュ・クロニクル』紙が労働党のコンプライアンス・ユニットに送ったのである。彼女が書いたのは、自分がユダヤ人とアフリカ人の混血で、自分の先祖はナチのホロコーストとアフリカのホロコースト(奴隷貿易)に関わったという「個人史」を書いただけである。彼女がコービン支持の左派活動家であったための処分である。
 彼女は、停職処分もその理由も正式に通知されていない。彼女は、「仲間に呼びかけて、党中央にはびこる非民主主義的慣行と闘う」と言っている。
 今週末も右翼メディア『サンディー・タイムス』が、全国執行委員で、ある労組の代表者を、「ユダヤ人差別者だ」と批判した。根拠は、彼がイスラエルの政策を批判したこと以外に何もない。このように、パレスチナ人のBDS運動(イスラエルに対する国際的なボイコット運動。イスラエル産品のボイコット、投資の撤収、経済制裁)を支援したり、イスラエルの占領を批判したり、シオニズムのロビー活動を批判したり、入植者の乱暴を批判する労働党の役員が、次々と「差別者」のレッテルを貼られ、無実の罪で停職処分に追いやられている。「このままだと、左派役員が少数派に転落する」と、ある役員が言っている。
 この夏に全国執行委員会の6議席の選挙があり、立候補者は12人。親イスラエル右派がこの選挙で勝って「党の右旋回」を狙って、暗躍している。ルーク・エイクハーストがその一人で、「我らはイスラエルを信じる」という集団の長である。しかし、立候補ビラには、党内で人気が悪いイスラエル政治や武器輸出には一切触れず、ただ「党の左傾化を防ごう」と書いているだけである。
 今年初めの青年部長選挙でも、パレスチナの市民運動とBDS運動を支持する左派のジェームズ・エリオットは、「反セム主義者」というレッテル貼りをやった女性候補ジャスミン・ベケットに敗れた。彼女は「レーバー・ファースト」という党内親イスラエル派閥のメンバーであった。

Pocket

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。