ナチスの手法に学ぶ?

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3/12政府主催 「1億総活躍社会集会」レポート

 「誰もが希望を持てるような、1億総活躍社会を実現する」-3月12日、グランフロント・コングレコンベンションセンター(大阪市)にて、政府主催の「1億総活躍社会実現対話」集会が開催された。基調講演を行ったのは加藤勝信・一億総活躍担当相。意見交換として、職業訓練受講生や管理職の女性、保育士、介護福祉士、精神障がいを持ちながら働く当事者が登壇した。会場参加者は約380名だ。加藤勝信氏は、総活躍への三本の矢として、(1)最低賃金引き上げや同一労働同一賃金、投資促進などによるGDP600兆円の実現、(2)保育サービスの拡充や保育士の待遇改善などによる希望出生率1・8の実現、(3)介護サービスの拡充や介護人材の待遇改善などによる介護離職ゼロの実現を述べた。具体策は述べられず、矢というよりは的を上げたに過ぎない内容だった。
ラボルテ(編集部)

現場から率直な意見も

 意見交換としては、「32人の部下のうち約4割の女性が家事・育児・介護を抱えて働いている。政府が女性の活力を経済成長に取り入れたいなら、まずはそのための環境を整備してほしい」(女性・管理職)、「保育所が足りていない。求職中の段階など、働く前から保育できる環境が必要だ」(女性・職業訓練受講中)などの意見が出された。また、「労働法に沿って働ける環境に全くない」(女性・保育士)、「頑張れば頑張るほど介護施設の収入は減る」(女性・介護福祉士)といった声も上がった。
 印象としては、登壇者それぞれが現場からの率直な声を伝えていた。政府主催にしては、踏み込んだ意見交換だった。

社会的包摂か国家的包摂か

 第二次安倍政権の目玉である「一億総活躍社会」のイメージは掴めなかった。最低賃金をいつまでに、いくら引き上げるのか? 「希望出生率」とはなにか? どうやって介護離職をゼロにするのか? 未だに「経済成長」神話にすがりつくのか? 地方創生や女性活躍推進社会のラベルを変えただけなのか、あるいは「自民党も社会保障に取り組む」とした選挙向けのアピールなのか? 講演のキーワードには、民主党政権時に謳われていた社会的包摂が使われた。
 ナチスの歴史をみてみよう。ナチスは、全権委任法の強行採決後(1933年)に、「誰も飢えたり凍えるべきではない」をスローガンに野宿者や生活困窮者支援を行った「冬季救助活動」、幼稚園の整備や困窮する母子支援を行った「国家社会主義公共福祉」など社会福祉・官製社会運動を推進し、広範な支持を得た経緯がある。
 2013年、麻生太郎氏(当時副総理)は、「改憲問題」に当たって「ナチスの手口を学んでみたらどうか」と発言したが、社会保障政策による支持の獲得についても手口を学ぼうとしているのか。
 一方、会場参加者へのインタビューでは、「安倍政権なのに、女性の権利や多様性の推進一辺倒で違和感を持った」(男性・自民党党員)と話した。身内である旧来保守層が違和感を持ち、支持を失ってでも進めようとする「一億総活躍社会」への気概を感じとることができる。

どちらに転ぶのか

「一億総活躍社会」の推進は、安倍政権・社会保障などの行政現場に対する対話のキーワードとなりうるか。社会保障をアピールすることで支持率を稼ぎ、安全保障では対テロ戦争・強硬路線に突き進む「国家的包摂」に化けるのか。今後の動きに注視したい。

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