エルマンノ・オルミ監督の最新作『緑はよみがえる』という映画を見た。第一次世界大戦下でイタリア軍がオーストリア軍と雪深い山奥で塹壕を掘ってにらみ合っている状況を描いた映画だ。現場を知らない上部の命令で兵士が無駄死にする現実。空腹で寒くてただ耐えるしかない状況で戦意は失せ、ただ降り注ぐ砲弾に逃げるしかなく、無駄に若い兵士が死んでいく。撤退命令で塹壕を後にする兵士には満足感はなく、仲間の死を胸に若者は老いてしまう▼戦争の現実は愚かしい。だが、こんな愚かしい戦争に徴兵されて参加する兵士たちを見て、人間とは悲しいものだとも思った。戦争に反対したり徴兵を拒否するのでもなく、ただ唯々諾々と徴兵に従って前線に送られ、命令の下で無駄に死んでいく▼唯一、希望もあった。大尉が、上層部のひどい命令に抗議して、この任務は犯罪である、私は尊厳を取り戻すといって軍位を返上するのだ。これは、主流秩序に抵抗する選択をしたということだ。今の日本でも、今後のひどい戦争体制時でも、この大尉のような選択をする自由は誰にでもある。そこに態度価値が生まれる▼メルトダウン文書を5年隠すとか、特定秘密保護法の不適切な秘密指定をチェックすることが何もできていないなど、現実はひどいことだらけだが、だからこそ私たちがどういう基準で生きるかが問われる。映画は最後に「人が人を赦せなければ人間とは何なのでしょうか」という問いで終わっている。(H)