作家 広瀬 隆
世論調査では7割が原発拒否なのだから、住民投票をやれば原発再稼働は必ず否決される。しかし自民党は有権者のわずか2割の得票で国会の圧倒的多数を占有してしまった。それでも我々はデモをやり集会をやり、講演会をやって対抗してきた。ところがようやく好機が訪れた。4月1日からの電力自由化で、原発を使わない新電力を選べるからだ。これは原発に対する国民的な住民投票だといえる。
各電力会社の夏のピーク電力を見ると、震災前の2010年と14年を比べると2505万キロワット(以下kw)も減っている。節電もあるが、企業の自家発電が増えてきたからだ。年間8000万kw(=100万kw原発80基分)で、今や全発電量の4分の1が自家発電になっている。このために、既存電力会社の占有率は75%まで落ちてきた。
電力会社をさらに追いつめれば、潰すことができる。南日本新聞によると、2015年11月1日時点で、九州電力から新電力へ切り替えた企業や自治体が7628件に上ったという。再稼働した川内原発の1・2基分=109万5千kwが、新電力に切り替わったのだ。高浜原発を再稼働させた関西電力は、電気料金を3割以上も値上げしたこともあって、解約件数が5000件を超えた(前年比1.8倍)。 博報堂による全国調査(2015年3月)では、家庭の消費者の64%が新電力への契約変更を望んでいる。電力会社の利益のうち7割は、一般家庭からなので、64%の一般消費者が新電力に契約変更すれば、45%の利益が吹き飛ぶ。そうなると、原発に固執する電力会社が生き残る道は、電気料金の値上げしかない。ところが、電気料金値上げを実施すれば、ますます電力会社離れが加速する。かくして、原発再稼働に突進する電力会社は、倒産する。
原発事故関連死 激増の可能性
原発事故関連死は2000人を超えている。2016年2月の福島の子ども甲状腺ガンに関する検査評価部会の発表値では、166人がガンに罹っていた。一方、東京都文京区にある順天堂大学付属病院血液内科の外来新規患者数(2013年11月)を見ると、2011年に比べて血液内科の疾患が総数で3.8倍に激増している。首都圏の病院における血液のガンである骨髄性異形症候群も事故前と比べると3~5倍増えている。
福島原発から東京まで220km。福島から東京まで山がないために、放射性物質が茨城を超えて東京に入ってきているのは間違いない。プルトニウムがホットパーティクルとして呼吸によって体内に入り、内部被曝したのだ。米国の核実験場から約200キロ離れたセントジョーンズでは、5年後からガン患者が増え始めた。私は、今後日本で100万人が死ぬと予想している。こんな原発の再稼働など、言語道断だ。電力自由化で電力会社を潰し、全ての原発を廃炉にすることは可能である。