TOP 森友・加計でも倒れない独裁政権 野党は今こそ実力行使の習慣を

森友問題中間総括と今国会の振り返り―豊中市議・木村真インタビュー 

「戦後最悪」の通常国会が閉会し、共謀罪がついに強行採決された。本紙も取り上げ続けた森友学園、加計学園、復興相暴言…と続いた内閣総辞職ものスキャンダルは、全て押し切られた。なぜこうなってしまったのか、全国で頭を悩ませ振り返っていると思われる。特に森友問題では、安倍首相が「関わっていたら辞職する」とまで豪語し、全国化した。その火付け役となった木村真さんは、「野党が今年度予算案に応じてしまったことで追及の場がなくなった」と語る。共謀罪でも審議拒否や実力阻止をするべきだったと、自身の体験に基づき戦術面の問題を指摘する。木村さんに森友問題の本質、今国会の総括の話を聞いた。(編集部・園)

森友問題の本質は戦争責任の放棄 加計学園は政治私物化の極み

―森友学園問題の本質を振り返って下さい。
木村:4月から5月に次々明らかになったのは、①財務省が主導して安値で土地の売却を行ったこと。②安倍昭恵が国有地売却に関わっていたのは間違いないこと。③、その根拠とされた「8億円のゴミ」など存在しなかったことです。安倍首相は国会で「自分や妻が関わっていたら首相を辞める、議員も辞職する」と明言しました。辞職すべきです。
 また、森友問題と愛国主義に深く関わる「日本会議」の実態はそれほど大きくはないとも感じました。日本会議系の文化人は、森友スキャンダルが大きくなったら蜘蛛の子を散らすようにサーッと逃げていきました。当初思っていたような巨大組織ではなく、宗教右派を中心とした寄せ集めの組織です。事務局を担っているメンバーは切れ者かもしれませんが、外縁を担っているのはゆるい人々で、事務局が号令を掛けたら全国の日本会議が一斉に動くというものではない。どこまでが日本会議かはっきりしない、弱い連絡協議体のようなものだろうと思います。逆に言うと草の根右翼なので、事務局がダメになっても、各地域の草の根は残るから、やっかいではあります。
 結局、日本が戦争責任を取らなかったことに行き着くんです。地域の草の根保守は、地方の町内会長などに源流があります。まず天皇裕仁が生きながらえ、天皇制も存続した。安倍の祖父の岸信介も釈放された。天皇が首をくくられていたら、日本の価値観も転換したでしょう。
 しかしそうはならず、若者を「天皇陛下バンザーイ!」と戦争に突き出していった連中も、そのまま地域ボスとして居座ったのです。東京や大阪など大都市の一部を除き大多数の地方でも、戦争責任の追及がなかった。戦争で負けても、庶民の生活実感としてはほとんど変わらなかったわけです。そのことの方が、天皇やA級戦犯よりも、大衆全般のメンタリティへの影響は大きいかもしれません。
 森友は何より教育内容の問題で、加計学園は政治の私物化問題です。加計の地元愛媛県今治市も経済的に疲弊しており、学園に対する経済的期待もあるのか、追及はまだ少ないようです。豊中は私立小学校を歓迎する理由もないので、市民運動が盛り上がりました。
 また、松井府知事と維新の会が森友問題に関わっていたことも間違いないので、5月19日、6月15日と、大阪府庁への抗議行動を行いました。維新の支持率がいまだ変わらないので、追及を続けます。

野党は予算案という人質を手放し安倍退陣のチャンスを逃す

―しかし、安倍昭恵氏の証人喚問は行われず、安倍政権は続いています。
木村:森友問題は、カルト右翼学園への利益供与です。欧州で言えばネオナチ学園に政権中枢が加担しているような話なので止めたいと、当初は思っていました。しかし、今はそのこと以上に、加計学園問題も含めて、あんなふざけた答弁がまかり通るのなら、「国会なんてあってもなくても一緒だ」なと、痛感しています。国会は国権の最高機関とされています。そこで首相が「森友疑獄に自分や妻が関わっていたら辞める」と明言したのです。委員会の公式答弁であそこまで言い切ったのに、何も無しですませるなど本当にありえない。
 その意味で、これで安倍の首を取れなければ、民主主義も何もありません。加計学園の問題でも、複数の現職官僚がリスクを侵して告発したのに、「再調査はするつもりもない」と押し通した。森友の件でも、交渉記録を破棄しました、と。「売買契約をもって事案終了、交渉記録は即時廃棄した」と。売買契約は、10年間の分割払いです。10年のうち1年分なら、残り1億円以上払っていないわけです。その状況で記録を破棄したなど、ありえない。記録は残っていたと思います。これがまかり通ったら、国会の議論など無意味です。
 それを指摘されたら、「一定期間が来たら文書は破棄するシステムです」と珍妙な答えをする。挙句の果てには、52億円もかけてパソコンやシステムを総入れ替えした。もうそこまでやるか、と思います。こんな答弁・対応を認めてはいけません。
 前々から、国会なんて何をしているかわからないと思ってはいたけど、ここまで露骨に国会軽視を行うとは。共謀罪の金田大臣の答弁もそうですし、与党が20時間・30時間審議したから「はい、採決」などありえません。マンガのようです。

役人の忖度と直接的な圧力

―80年代末のリクルート事件の追及では、内閣総辞職、中曽根元首相の自民党離党まで行きました。なぜ、今は変えられないと思いますか。
木村:いろんな要素があります。いろいろ言われている「役人の忖度」で言えば、内閣人事局が人事を握っているとか、自民党内の安倍以外の人間が情けないのは、小選挙区制の問題で党中央から公認をもらわなかったら選挙で勝てない、という問題があります。僕としては、安倍昭恵や政治家からの直接的な圧力があったと思うので、それを「忖度」という言葉で片付けるのは、早すぎるだろうと思います。ただ、安倍昭恵が問い合わせただけで役人が勝手に意向を忖度するなら、それはそれで恐ろしい話だなと思います。
 今まで僕らは、公務員に、「杓子定規でかなわんな」と思う反面、きちんと仕事はやってくれていると、一定の信頼を持っていた。それが全然違って、政権中枢が直接絡む問題なら勝手に忖度してやりたい放題やるとなったら、ひどすぎます。「消えた年金問題」からそうですが、森友・加計と立て続けに出てきて、かなり暴露されたにもかかわらず、誰も責任を取らずに片付けられている。今後同じ問題が起きても、同じやり方で押し切られます。

全国が森友の話題昭恵も喚問できた

―2・3月の森友問題のピーク時には、安倍政権の首を取れるところまで行けるのではないかと思っていましたか?
木村:かなり追い詰められるのではないかという雰囲気がありました。テレビの報道は国会でやっていることを大きく取り上げるからです。でも今は、残念ながら森友は完全に忘れられています。
 野党の責任も大きいと思います。特に予算案を通させたことが大きな失敗です。森友問題も、国会で紛糾、審議ストップして、ということはなかったのです。「市民の声が野党を後押しして」とか言うけど、3月頃の雰囲気なら審議拒否できました。そこら中で森友の話をしていたし、全国に豊中市の名前が知れ渡りました。今年4月に、うちの子どもが九州に山村留学に行くので、入学手続きで一緒に行きました。買い物でお店のおじさんに「どこからですか?」と聞かれたから「大阪の豊中という所です」と答えたら、「豊中ですか!あの森友の」と言われたくらいです。

潮目変わったのは3月予算案成立

 潮目が変わったと思うのは、3月23日です。籠池の証人喚問があって、多くの人が「本当のことを喋っているのではないか」という印象を持ったと思います。あの時の一番の衝撃は、「安倍昭恵からカネをもらった」ということをかなり具体的に生々しく語ったことです。
 その1週間前に、籠池が野党議員を豊中現地に招いた時に、「ここの建設のお金には安倍総理からのお金も入ってるんです」と発言した。それを聞いた自民党の国対委員長などが「総理を侮辱してる」と訳の分からないことを言って激怒し、籠池の参考人招致すら拒否していたのに、証人喚問に格上げして実行したわけです。終わったら偽証罪で告発する、とも言っていました。
 あの時は、全国がこの話題で埋め尽くされていました。あの時に、野党は「安倍昭恵を国会で証人喚問しなかったら予算案の審議を拒否する」とできたはずです。野党がそれをしなかったのが信じられません。
野党は市民を信じて審議拒否不逮捕特権で国会停止させ、街へ
 籠池の証人喚問を行った同じ3月23日に、民進党の国対委員長が今年度予算案の3月27日採決で合意しました。今が一番安倍昭恵を呼び出すチャンスなのに、こいつら一体何を考えているんだ、と愕然としました。呼び出せば、まともに答えられなかったり、逆にポロッと本当のことを喋ってしまったり、相当追い詰めることができたはずです。あの時なら、野党が国会審議を全部拒否しても、一般市民は「当然だ、頑張れ! 何が予算だ、知るか」と言ったと思います。それなのに、予算案という人質を自ら手放したのです。
 予算委員会は必ずテレビ中継がされ、安倍首相も出てきます。予算案成立以降、森友問題のテレビ露出ががくっと減り、扱いも小さくなり、「予算は成立。次は共謀罪だ」となってしまいました。もちろん共謀罪反対も大事ですが、本来ならその前に安倍が辞めていなければいけません。そんな奴が率いている国会などすでに正当性はありませんし、安倍に審議する資格はありません。辞めているべき首相がのうのうと国会に出てきて共謀罪の審議をしている。こんな重要法案を審議するなら、まずはきっちりこの疑惑を終わらせてからでないとやってはいけないんです。
 同じことが加計問題でも繰り返されていて、元文科省の前川さんが告発会見をした時に、「人柄的にも良さそうだ」と割と一般的には好感を持たれていました。それに対して、再調査もしない政府の態度は傲岸不遜だ、とみんなが感じていました。「何が共謀罪だ、前川の証人喚問が先だ」と審議拒否をできたはずです。
 共謀罪なんて、審議に応じてどうするんですか。審議拒否以外に有効な方法はありますか? 僕も今、野党事務所に「審議拒否すべき」とFAXを送りまくり、ネットにも書き込み続けています。あの金田と議論など成り立たない。委員会を開かせたらいけないことは、わかりきっています。

委員会室占拠議長監禁も可能

―自分も東京で見てきましたが、何が何でも身体を張るんだという発想が議員にはないと思います。
木村:具体的には、たとえば国会の中に大工道具を持ち込んで、委員会室を占拠して、扉に内側から板切れを打ちつけて、衛視が来ようが何しようが入れない。使わせない。委員長を拉致監禁してもいいんです。とにかく委員会さえ開かせなければ審議も採決もできないのだから、それしかないんです。国会を停止させつつ、街頭に出て市民に訴える。自分が野党の代表だったらそうしますよ。
 捕まろうが何しようが、国会議員が国会内で逮捕されたら大問題になるから、幸いなことに闇に葬りようがないんです。ある意味では名前を売るチャンスでもあるんだから、それくらいやれよと思います。結局本気で反対するつもりもないのかな、と思います。こんな状況じゃ、あほらしくて選挙なんか行く気しませんよ。
 共謀罪なんて、大概の市民運動がアウトになるじゃないですか。治安維持法は1925年、敗戦は45年。大正デモクラシーの高揚で普通選挙を勝ち取ってから、わずか数年で満州事変に突入、そこから敗戦まで一直線です。今はまだ「そこまでにはならないよ」と思っていても、10年たったらどうなるか、誰にもわかりません。
 森友、加計問題で安倍を退陣させられなかったらどうしようもない、と感じています。街頭アピールでは「真相究明」と言うけれども、何より安倍内閣を打倒しないと、俺ら何のためにやっているのという話です。これだけのネタが続いて、たかが内閣一つ倒せなかったら、未来がないです。

豊中でも直接阻止党を越えて行動を

 僕が議員も実力阻止行動を取るべきだと思うのは、自分の経験があるからです。戦争法採決直後の2015年10月、豊中市の学校に防衛政務官が「世界情勢について」という講演会に来ることになりました。まさに戦争法成立を受けた自衛隊派兵を正当化する内容です。そのため、豊中市に「中止すべきだ」と抗議交渉し続けましたが、市は中止しない。
 そこで「実力で粉砕する」と宣言し、ネットで市民に講演会当日朝、校門前に集合するよう呼びかけました。政務官が来たら市民で車を囲み、窓を叩いて「帰れ帰れ」と追い返すつもりでした。そうしたら市は、前日に突然「混乱が予想されるため」と中止しました。森友学園も、実際に開校されそうになったら、そうして潰すつもりでした。
 野党共闘の質が問われています。秘密法、戦争法と同じ強行採決が繰り返されていますが、安倍政権がそこまで強固なわけではない。「アラブの春」でも民衆がデモを繰り返して、政権はあっけなく崩れました。権力も意外ともろいのです。韓国では市民や労働組合が主体の運動が強い。日本も昔から大人しかったわけではなく、学生運動も労働運動も強かった。12年の大飯原発再稼働時に、ゲート前にテントを張って直接阻止しようとした闘いも同じです。議員もそうした力を信じて闘えばいいんです。
 国会議員には不逮捕特権があります。逮捕されても議員を辞めさせられはしません。党として審議拒否できないなら、党を超えた個人が連帯して拒否すれば良いのです。自分たちと同じ考えの市民がたくさんいるんだ、と信じてやるしかありません。実力阻止行動もできる議員のネットワークを作りたいですね。そういう方針で、森友の追及も安倍政権の打倒も頑張っていきましょう。

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