経済優先と決別し原発全廃へ

5・7高浜原発うごかすな!現地集会

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追い詰められた関西電力 なりふり構わず 強行突破

関西電力は、早ければ17日にも、高浜原子力発電所4号機を再稼働させ、6月中旬に営業運転を始める方針を発表した。高浜4号機は既に原子炉への核燃料157体の装着を終えており、うち4体はウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料となっている。発表どおり4号機が再稼働されれば、国内で稼働する原発は、川内1・2号機(鹿児島県)、伊方3号機(愛媛県)を合わせ、4基となる。こうしたなか5月7日、「高浜原発うごかすな!現地集会」(高浜町文化会館)が行われ、全国から400人が集まった。集会を前後して高浜原発ゲート前抗議行動、高浜町内デモも行われた。8~12日には高浜町~福井市のリレーデモ、12日「高浜原発原発うごかすな!福井集会」も行われた。高浜原発再稼働をめぐる攻防は正念場を迎えている。(編集部・山田)

複雑な心境の現地住民有刺鉄線と過剰警備のゲート前

 「原発で食っている人もおるもんで、絶対アカンとは言えん。事故が起これば、福島みたいになるのは怖いけど、高浜の場合は高い防潮堤を造ったから、なんともないんかなぁとも思っている。どっちがどうとは、なかなか言えんなぁ」―高浜町内デモを沿道で見守る地元男性の声だ。他にも数名聞いてみたが、「コメントできない」との応答も多かった。
 再稼働が間近に迫るなか、高浜町民の不安が率直に表現されていると感じた。原発から高浜町中心街までの距離は、わずか5㎞。福島事故を引き合いに出すまでもなく、重大事故が起これば街は消える。
 この日の抗議行動は、ゲート前から始まった。関西・福井県を中心に全国から脱原発を求める市民約200人が集まり、プラカード・楽器などを手に再稼働反対を訴えた。
 神戸駅からのバスに乗せてもらって参加したが、原発に続く道路には検問所が設けられ、全ての車両がナンバーやトランクをチェックされた。ゲート前に着くと警察官はその数を増し、抗議者を威圧するかのようだ。ゲートは厳重に施錠され、有刺鉄線と警備員で固められている。ゲート前道路両側には鉄柵が設置され、横断も自由にできない。写真を撮るために鉄柵を越えようとしたが、しつように妨害された。彼らは、誰から何を守ろうとしているのか?
 正午近くになると参加者は、小太鼓や楽器を鳴らしながら、「震災国日本に原発はいらない」「再稼働反対」などとアピール。再稼働阻止全国ネットなど3団体が、再稼働中止を求める申し入れ書を関電職員に手渡した。再稼働阻止全国ネットは、次のように訴えた。
―日本列島は火山と地震の活動期に入っている。さらに貴社の原発は老朽化しており、再稼働して絶対安全な保障はない。福島のような事故が起きた場合、数十㎞の生活場所は失われ、琵琶湖を汚染する事態になる。コストがかかっても原発に依存しない電気事業を行った方が、貴社にとって得策であることは、関西の市民の安全、貴社の存立を考えても明らか。原発事故を未然に防止する上から、再稼働の中止を求める―。
 また、「原発設置反対小浜市民の会」(福井県小浜市)の中嶌哲演・元事務局長は、「この鉄塔と送電線で電気の行く先の人々が結集している。再稼働しないでください」と訴えた。

「最初は少数派でも最後は真実が多数派になる」

 現地集会は、木原壮林さんの挨拶から始まった。同氏は、大津地裁の運転差し止め仮処分決定(2016年3月)を覆した大阪高裁判決(2017年3月)を厳しく批判。高浜町音海(おとみ)地区の自治会が採択した原発運転延長に反対する意見書を紹介して、地元住民の不安を訴えた。その上で再稼働は絶対に許されないとして、一連の抗議行動への参加を呼びかけた。
 その後、全国各地からのアピールが続き、福井原発訴訟原告団長・辻義則さんの講演=「高浜原発再稼働を進める大阪高裁決定をきる」が行われた。辻さんは、「新たな安全神話が作られようとしている。大阪高裁判決が他の裁判所の判断に悪影響を与えることは否定できない。世論の変化が裁判官を動かす。原発に未来がないことは遠くない先誰の目にも明らかになる。最初は少数派だが、最後は真実が多数派になる」としたうえで、「再稼働を進める政府と原発推進勢力を世論の力で追い詰めよう」と訴えた。
 続いて、「ふるさとを守る高浜・おおいの会」、「原発住民運動 福井・嶺南センター」など原発立地地元からのアピールがあったが、美浜町議会議員・河本猛さんのアピールを紹介する。(1面下参照)
 集会は、「原発がなくても電気は足りることを福島事故以降の経験が教えている。不要な原発を稼働させて事故のリスクに怯える必要はない。人類の手に負えない原発の再稼働を進めるならば、私たちはあらゆる手段で、粘り強く全原発の廃炉まで闘う」との集会決議を採択し、デモ行進へと移っていった。

アメーバデモで高まる関心

 集会終了後、参加者全員で町内デモが行われた。沿道で見守る町民の姿は多いと感じた。普段は静かな港町だ。再稼働を間近に控え、町民の関心も高まっているに違いない。「関西の運動は年々発展してきており、今が最大の正念場に来ている」(たんぽぽ舎・柳田真さん)。関西3県が一緒になってスクラムを組んで闘争を組めるようになっているからだ。
 若狭の原発を考える会が継続してきたアメーバデモ(注参照)の効果も大きいだろう。
 関電は、高浜3号機を6月上旬に再稼働させ、7月上旬に営業運転を始める方針。 今秋には大飯原発3、4号機(福井県)も再稼働させるという。
 「もうひとつ広い層の仲間を連れて集会を盛り上げることが重要」(柳田さん)となっている。5月20~21日には、東京で再稼働阻止ネット全国相談会が行われ、戦術が議論・決定される。また、家にいてもできる行動として、「高浜を止めるためのはがき運動」が展開されている。福井県知事と関電に宛てたはがきで、これまで6万数千枚が取り組まれた。
 東電の柏崎刈羽原発は、当面再稼働はない。関西電力の原発を止めることができれば、日本の原発は主要部分を止めることができる。原発再稼働をめぐる攻防は正念場を迎えている。
※注 アメーバデモ
 ノボリを掲げ太鼓をたたき、歌と再稼働反対のメッセージをメガホンから流しながら、チラシを各戸配布する。高浜町、大飯町、舞鶴市などで行なっており、木原壮林さんは「近隣地域にも広げていくつもり」という。地域密着型の運動として、チラシの全戸配布を始め、「運動を線から面へ」とアメーバデモを生み出した。

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