東西で強行される「被災者切り捨て」

阪神淡路大震災22周年の抗議集会―福島避難者のアピール

 編集部 園 良太
 阪神淡路大震災から22年目の1月17日、神戸市役所南側の東遊園地で「阪神淡路大震災1・17のつどい」(神戸市、市民、ボランティアによる開催)が行われた。多くの人々が早朝から集まり、神戸市長もあいさつした。
 その追悼集会とは別に、市役所正門前では、同時刻からテントを張って「第22回追悼・連帯・抗議の集い」(主催・同実行委)が開催された。被災者切り捨て政策を止めるために、震災翌年から毎年続けられているものだ。
 神戸市は昨年2月、復興住宅「キャナルタウンウエスト」の被災住民に立ち退きを求めて神戸地裁に提訴した。被災住宅が入居から20年の期限で家主に返還される制度であることを、住民は6年前に知らされたが、入居時に説明は一切なかったという。
 住民が退去を拒むと訴状が届き、裁判が始まった。長年住んだ住宅からの追い出しと裁判まで強いられた住民は途方に暮れており、支援団体の怒りも高まっている。借り上げ住宅には昨年末現在で約2800世帯が住んでいるが、ほとんどの住民が2022年までに入居期限が来て、転居を迫られることになる。「市が『被災者ゼロ・完全復興』をアピールして財政負担を減らすことが目的だ」と人々の怒りが高まっている。
 関東でも同じ問題が起きている。政府は、東日本大震災・福島原発事故からの区域外避難者のうち約1万2千世帯への住宅支援を、今春に打ち切ろうとしている。福島県と避難先自治体の職員が避難者の住宅を個別訪問し、「安全なのになぜ福島へ戻らないのか」などと恫喝し、ドアに追い出し期限の紙を貼って回っている。知らない土地で孤立を強いられてきた人を行政がさらに追い込んでいるため、入院した避難者までいる。多くの避難者が「国と福島県が『避難者ゼロ・完全復興・放射能は安全・原発再稼働』をアピールするためだ」と憤る。避難者切り捨てが東西で同時進行しているといえる。
 関東では支援組織が立ち上がり、避難者からの相談受付や行政交渉を行っている。だが、五感で感じ取れない放射能の問題は隠蔽がしやすく、筆者も状況の厳しさを感じていた。そうしたなか神戸では、神戸市役所前にテントを張り、道路沿いに「追い出し問題」の新聞記事をパネル展示していた。
 午後からのぜんざいの振る舞いに多くの人が訪れ、多彩なミュージシャンによるライブも行なわれた。本紙コラム連載中の趙薄さんが歌い、月桃の花歌舞団がエイサーを披露し、通行人が次々と踊りの輪に入った。過去には市役所前にプレハブを建てて庁舎前を占拠したり、県庁ロビーにストーブを持ち込んで座り込んだこともあったという。呼びかけ文には「今や、黙する時ではありません! 無抵抗の時ではありません! 人々が声を上げる最後の時、立ち上がる最終の時だと言えます」とある。
 状況が悪化する一方の関東から避難移住した筆者には、こうした取り組みと呼びかけを行えば問題が可視化される、と光明を感じた。もちろんその前に国や福島県が態度を変えなければいけないが、それがなされない時、多くの避難者と支援者が手を取り合って実現されることを願った。

避難の権利と希望を求めて

 同集会に先立つ1月15日には、神戸市・新長田で『生きる権利、避難の権利を求めて 阪神淡路大震災22周年集会』が行われ、2つの震災の問題がつなげられた。
 まず神戸市議会議員の粟原富夫さんが神戸市の追い出し政策の問題点を詳細に報告した後、郡山市から大阪に母子避難した森松明希子さんが思いを話した。
 森松さんは兵庫出身で、阪神大震災も大学時代に体験している。「被災者切り捨てが同時進行している事態を身をもって感じる」と話してから、避難生活のこれまでを振り返った。
 1カ月の避難所生活を経て夫を残して避難したが、事故から約2週間後に東京都の水道水からセシウムが検出されたことに「すべてが汚染されてしまった」と人生最大の衝撃を受けたことがきっかけだった。人間は放射能に抗うことはできず、命の大事さを社会全体が思い起こす必要がある。「避難の権利」は憲法上の権利であり、国に実現させるために原発賠償関西訴訟を起こした、と訴えた。福島では放射能隠蔽政策が進んでいるが、「避難した自分は今ここで皆さんとつながっている、ここに希望がある」と語った。
 その後、被災者を中心に結成したサンダルや靴を作る「被災地労働者企業組合」の方々もアピールし、避難生活にとって欠かせない「仕事・雇用」を自分たちで作っていくことも可能なのだ、というとても新鮮な内容だった。集会で歌った歌手の川口真由美さんは「めっちゃ履き心地が良い」と絶賛し、最後はみんなで酉年にちなんで、鶏のお面を被った踊りを踊った。
 この明るさやノリの良さも、関西の力強さの源なのだろう。今後も本紙で東西の動きをつなげて取り上げていきたい。

東西の取り組みをつなげて取り上げていきたい。

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