高齢被災者を神戸市が追い出し通告

神戸市・被災者借り上げ住宅退去裁判

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編集部・脇浜義明

 阪神淡路大震災被災者で、神戸市の被災者借り上げ住宅からの退去を迫られている吉山氏の裁判が、5月12日に神戸地裁であった。
 借り上げ住宅とは、被災者用公営住宅が不足だったため、自治体が公団や民間から住宅を借りて被災者用に賃貸したもので、自治体と家主の賃貸契約(20年期限。契約更新で延長可)と、自治体と被災者の賃貸契約(期限は明記と不明記があり、吉山氏の場合、期限はなかった)という二重の賃貸契約がある。
 高齢で病気がちの被災者たちは、残り少ない人生を借り上げ住宅で送ろうと、コミュニティを形成、「終の棲家」として暮らしていたが、神戸市は、彼らに「20年経ったから立ち退け」と通告、拒否した吉山氏らを、裁判に訴えたのである。
 この前代未聞の裁判に、東北や熊本の地震災害の影響もあって、世論の関心が強く、裁判には100人以上の傍聴者が駆けつけ、場外で待つ人々も多かった。人権派弁護士らも関心を寄せ、10人の弁護団が結成され、裁判活動の他、災害被害者を守る恒久法の制定を求める署名活動も提案した。裁判所も、当初は1人の裁判官の予定だったが、社会的影響の大きさを考慮、3人の合議制にした。NHKをはじめ、マスメディアも取材に来ていた。
 私がこの被災者擁護運動に関わり始めた頃は、「復興は終わった」として、世間からもマスメディアからもボランティアからも、冷たい目で見られていたものだが、東北や九州の惨事の影響で、関心を持たれるようになった。「復興は終わった」という場合、弱い者、マイノリティ、社会的周辺部の被害者のことは、たいてい考慮されていないものである。そこで人間らしい要求の声をあげると、「いつまで甘えているのだ」とか「ゴネ得する気か!」と揶揄される。神戸の問題はそういう「取り残された」人々の問題であり、今後、東北と熊本でも直面する問題である。
 裁判後、簡単な集会を開き、「借り上げ復興住宅居住者有志と支援者一同」の名で、「日本は未だに被災者の居住権に関する理解と法的整備がなされていない」ので、「この裁判を通じ、災害大国であるといわれる日本に住む多くの住民とともに、居住する地域にかかわらず、すべての被災者が、意に反する転居や特定の地域や施設における居住を強要されることなく、災害復興住宅などを『終の棲家』として暮らし続ける『被災者居住権』を獲得するため、力を合わせて闘っていく」ことを宣言した。

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