【時評短評】調子に乗った自民市議が市民活動に圧力

安倍政権の言論封殺

書き手:豊中市議会議員 木村真

 高市総務相が、「政治的中立の観点から問題がある場合、テレビ局の放送免許を取り消すこともあり得る」という趣旨の発言をするなど、安倍政権によるメディアに対する監視と恫喝は常軌を逸した感があります。この春、『ニュース23』(TBS系)の岸井成格氏、『報道ステーション』(テレビ朝日系)の古館伊知郎氏、『クローズアップ現代』(NHK)の国谷裕子氏と、政権に対して時には厳しく突っ込むこともあったキャスターが相次いで降板しましたが、偶然ではないでしょう。豊中でも、先日の市議会で、言論・表現の自由をめぐり、信じられないような質疑がありました。

自民党議員が安倍政権批判を問題視

 3月16日の総務常任委員会。自民党の喜多正顕議員が、とよなか男女共同参画推進センター「すてっぷ」の多目的コーナー(市民活動グループが自分たちの活動を紹介したり考えをアピールしたりするための展示スペース)をやり玉に挙げました。あるグループの展示の中に、ごく小さな文字(見出しではなく本文の部分)で、「国民を裏切り続ける安倍政権」「安倍政権にNO!」といった語句が使われていることを問題視し、「一方的な政治主張だ」として、市に対応を迫ったのです。
 喜多議員が問題視したのは、すてっぷ自身でなく、市民グループの展示の内容についてです。表現・言論の自由を制限するよう市に迫るものであり、憲法違反を求めているにも等しいと言えます。当然、市は、このような不当な圧力に対しては「市民活動に介入はできないし、するつもりもない」と、毅然とした対応をすべきでしょう。
 ところが、市の答弁が、これまたひどいものでした。なんと、「公共施設に掲示するのは好ましくないので、改善していく」と答弁したのです。これを受けて喜多議員は、「早急に取り外すよう要望する」と質問を締めくくりました。「人権擁護都市」を宣言している豊中市として、情けない限りです。
 私は市議として一度、市民グループの一員としてもう一度、人権文化政策監(部長級)の山本氏と委員会で答弁した男女共同参画推進担当主幹・松原氏と面談しました。彼らは、「検閲することなど一切考えていない」と言いつつ、一方で、「特定の政党、政治家を名指しで批判するのは、公共施設の展示としてはふさわしくない」「展示のあり方を考えていきたい」とも述べました。「あり方を考えていきたい」とは、つまり、「どういう展示なら可でどういうものが不可か、ルールを整備する」ということ。彼ら自身が述べた通り、「特定の政党や政治家を名指しで批判する」ものは不可とされるのでしょう。
 政権が暴走しても(すでにしていますが)、有力政治家が問題発言しても、批判できなくなります。もしも市民グループが「名指し批判」を含む展示をしようとしたらやめさせるのか?そう尋ねると、山本氏は「市の考えをご説明し、ご理解いただく」。「検閲」という言葉こそ使わないものの、やろうとしていることは検閲そのものです。

すてっぷをめぐる歴史的背景

 今回の問題の背景として、一つには、冒頭述べたような、安倍政権や自民党による一連の言論封殺の動きがあることは明らかです。地方議員たちもすっかり調子に乗っているのでしょう。
 もう一つの背景には、すてっぷをめぐる歴史的な経緯があります。2000年の開館以来、すてっぷは保守反動勢力からの攻撃にさらされ続けてきました。初代館長の三井マリ子氏はバックラッシュの嵐が吹き荒れる中、「ジェンダーフリーで日本の伝統的家族制度を破壊する」「フェミニズムは革命思想で、社会を混乱させる」といった、意味不明な批判?の集中砲火を受け、圧力に屈した市により2004年3月に解任されます。
 数年後には館長職が廃止され、活動はすっかり弱体化。その後も議会では、ナンセンスではあるが与党議員なので一定の圧力として作用する批判を受け続け、ここ数年も、「『慰安婦』問題でのいわゆる『吉田証言』と取り扱った本を蔵書から全て撤去せよ」「『男は黒で背広姿、女は赤でスカート』という通常のトイレ表示はジェンダーの固定観念を助長する、などと屁理屈をこねてわかりにくい表示をしているのはケシカラン。普通のものに替えろ」等々、まさしく言いたい放題・やりたい放題。今回の喜多議員の発言は、ついにすてっぷ自身だけでなく、市民グループの主張の内容にまで土足で踏み込み始めた、ということです(ただし、難クセのつけ方としては、批判の矛先は市民グループではなく、「あんなケシカラン展示を放置しているすてっぷは何をしとるんだ!」と、あくまですてっぷです)。

市民活動の制限を許すな!

 「市民グループの活動を制限せよ」と求める喜多議員、「かしこまりました、改善します」と応じる市…。すてっぷの指定管理者である財団法人は、「市民の自由な活動を最大限保障したい」としつつも、「すてっぷは市の施設で、私たちは管理者に過ぎない。市の意向を無視することはできない」と、早くも言い訳を始めています。市とすてっぷだけの閉じた関係の中では、「施設の所有者と管理者」となり、市(を通じた一部議員)からの圧力に抗することはできないでしょう。「一部の議員が市を通じてすてっぷに圧力をかけ、市民活動の自由を制限しようとしている」ということを、できるだけ広く市民に伝えていくことが重要だと考えています。