9月12日(火)18:30開始(3時間弱)
オンライン(後述の方法で参加予約を頂いた方に招待メールを送ります)
資料代:500円
報告者:飯村祥之(イタリア政治哲学研究・東日本国際大学専任教員)
主催:ルネサンス研究所
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「昨年春にハート=ネグリの新著『アセンブリ――新たな民主主義の編成』(岩波書店)が刊行された(原著2017年)。
今回はその訳者の一人、ネグリをテーマに博士号論文を準備している若手研究者を招き、
2000年の『〈帝国〉』出版以来のハート=ネグリの政治思想・政治哲学の変遷と現在について語っていただく。
『アセンブリ』は、2011年の世界的な反乱(アラブの春、福島原発事故への抗議、西欧各国の都市占拠、オキュパイ・ウオール・ストリートなど)
以降の政治闘争路線の不鮮明化がもたらした運動の混迷と衰退を経て、2010年代の闘争を総括し2020年代の闘争を展望するためのテキストだ。
街頭行動に現われた民主主義をいかに継続できるのか。あるいは党を形成して国政選挙などに挑戦するのか(スペインのポデモスのように)。
ウクライナ戦争を契機に大軍拡と大増税にひた走る岸田政権、
そしてこれに取って代わる勢いを見せ始めた維新、現情勢下では右翼諸勢力が状況をリードしているように見える日本社会において、
私たちの政治的構想力が問われている。なお、今回は今後何年かかけて継続する予定の「コミュニズム再考=再興」の企画の第1弾となる」
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「ハートとネグリは『アセンブリ』において、大衆運動の「指導」がいかにあるべきかという古典的テーマを取り上げています。
これは本書を貫く主要なテーマの一つであり、一面において、
それはスラヴォイ・ジジェクやジョディ・ディーンらが2010年代初頭の闘争を総括する中で行った前衛党を再評価しようという議論に対する批判的応答です。
ここで私たちが思考するよう促されるのは、前衛党的ではない「党=指導」についてです。
この点で、この著作は1960年代のイタリアに始まる理論潮流、オペライズモの遺産の再検討ともいえます。
それというのも、ハートとネグリがここで提示した「指導は戦術について決定し、運動が戦略について決定する」という図式の原型は、
オペライズモの代表的理論家であるマリオ・トロンティによってすでに1960年代には示されていたからです。
こうしたオペライズモが残した議論は、2019年にトロンティの主著『労働者と資本』が半世紀を経て英訳されたように、近年(とりわけ英語圏で)活発に読み直しが行われており、
それらはいずれも2010年代前半の闘争が残した課題の解決というアクチュアルな問題意識に基づいています。
とはいえ、こうした英語圏での再読は、選挙政党を革命的な目的のためにどのように利用するべきかという、
特に1970年代以降のオペライズモ右派によって提起された問いにも接近しており、
選挙という枠組みへの回帰を伴っています(cf. キア・ミルバーンの「選挙論的転回」)。
しかし、私たちは選挙や議会といった枠組みに囚われ続けるほかないのでしょうか?
むしろハートとネグリはオペライズモ左派の遺産を引き継ぐことで、前衛党でもなく、また選挙政党でもない、
そうした既存のフォーマットを超えた「党=指導」のイメージを提示しようとしています。
ここでは『アセンブリ』の議論をきっかけとして、私たちは政治について何を考えうるか、その想像力の可能性を考えていきたいと思います(飯村)」