【文化欄 Iターンするひとびと(5)農業 平 知子さん

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京都・美山で地域住民と対話し 発酵食品や水脈整備ワークショップ 聞き手 編集部 矢板 進

 まず第一に自分の生活。自分の生活のなかに地域があり、地域活動のなかに政治がある。当たり前のことだが、ついついおろそかになってしまいがちだ。インタビューをとおして大らかさと熱さの両方を備えたひとという印象をもった。今後やっていきたいことは?という質問に、「裏の山をなんとかしたい」という答えが返ってきた。インタビューをお願いしたときも「そんなにしゃべることあるかな?」という返事だった。その言葉の裏には、なにも特別なことをしているわけではない、あくまでも生活の延長として活動がある。そんな彼女の姿勢があるのだろう。  

前回、インタビューをした斉藤純子さんが影響を受け、一緒に活動をしているという平知子さんに話を聞いた。

 出身は長崎県佐世保。軍港であり、港町であった。京都の大学に進み、大学で出会った配偶者と京都の左京区黒谷や右京区の高雄に住んでいた。高雄の国道沿いの家は、子どもにとって危険だと思い、美山に引っ越した。平さんの自宅は棚田の一番上にあり、棚田一段一段を見下ろせる眺めのいい立地。野菜は「毎日よう面倒をみん」と言うが、お米は家で食べる分と余った分はおすそ分けをする程度作っている。  

「Iターンのきっかけは?」と聞くと、「ノストラダムスの大予言」、と返ってくる。懐かしい。もはや同世代にしかわからないワードだが、あのときから世界の終りに近づいていることは変わらないという。  

大震災などで街が機能しなくなったとき、水や薪などの火で生活エネルギーが確保できたり、農作物を育てることによって食料の供給がなくともしばらくは生活できる農村に可能性を期待していた筆者であったが、平さんに言わせると「美山のこの辺りは間違いなく道が寸断される」。危機に瀕したときに可能性があるという意識はなく、むしろ世界がどうなるか分らないから、せめて好きなところに住むのだと語る。  

だからといって悲観的になっているわけではないのは、平さんの活動をみていても分かる。これまでにも美山DOORSという里山の魅力を伝える体験プログラムに参加。鎌仲ひとみ監督の『小さな声のカノン』の上映会は、美山診療所の先生から勧められて主催した。上映会に参加してくれた周囲のひとたちなどとの会話から、放射線被ばくによる甲状腺がん予防のための安定ヨウ素剤の事前配布をして備えようという話になり、議会を中心に要望を出した。その後、「なかじの腸と発酵とココロとカラダのお話と整腸ボディワーク&ここから」というワークショップを主催した。発酵食品は原発事故以降、免疫力を高めると言って、特に注目された。  

平さんの活動内容には連続性があるように思える。どのイベントも、平さんと地域のひとたちとの対話を参考にしながら、平さんの関心のままにやっているという。美山は地域によってきれいに分かれるところもあるが、全体的に政治的な関心は高い。平さんの活動は、地元のひとからも「がんばってはるなぁ」と、参加はしないまでも、関心はもってくれている印象があると言う。  

農村に力を つけていきたい

また、現在は集落の一番上に位置する平さんの自宅も、かつては家の裏は棚田のように拓かれていたらしく、「みんなで学ぶ大地につながる水脈整備」というワークショップも、講師を招いて実施している。地中の水や空気の流れの改善や自伐型林業などに関心がある。種子法廃止や先月末に締結された日米貿易協定など農作物の関税引き下げ、および撤廃などの日本の切り売り。行政コスト削減のための地方集中など、農村地の切り捨てが進行するなか、まずは生活のなかから必要性を感じたときに動くようにしながら農村に力をつけていきたい、と語った。  

前回紹介した斉藤純子さんと一緒に「れいわ新選組」のアピール活動をする平さんだが、「れいわ新選組」については、「候補者ひとりひとりが組織に圧されてないのが最大の魅力。山本大国にせず、それぞれの魅力的な候補者のいろんな意見を意見が違うままで尊重し合っているところが、透明感があっていい」と評価した。   

それぞれ魅力や可能性など、見ているものが違うというのもとても興味深く、そのようなおふたりの関係にも可能性を感じる。多様な視点が地域に力をもたらすようにも思えて心強い。

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