【沖縄】辺野古新米軍基地建設を問う(下) 基地問題の核心は日米安保体制 山本 英夫(フォトグラファー・名護市在住)

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シリーズ・運動現場からの安倍政権批判(3)

一流国家幻想を振りまき 米国従属を加速する安倍政権

 辺野古側に造られた護岸によって、日々自然環境は犯され壊されつつある。これは土砂投入以前の問題だ。一方で、埋め立て作業は形式的だ。水面から8・8mまで嵩上げする計画だが、現行の護岸の高さは半分に満たない。大浦湾側に着手できないからだ。  

しかし、沖縄防衛局は設計業者を決め、技術検討委員会を発足させ、やる気満々だ。もっとも、設計業者に米軍と打ち合わせを重ねることを指示し、自信のなさ、米軍への責任転嫁も見え隠れしている。  

今後の焦点は、大浦湾に広がる軟弱地盤を工事できるか否かであり、これに伴う工事の「変更」を巡る問題だ。国は公有水面埋立法に基づき、設計変更申請を県に提出するはずだ。玉城知事がこれを認めなければ、国が県を提訴。これを巡る争いが裁判闘争に集約されていけば、私たちに勝機はない。基地建設が完成しなくても、法的に「合法」となり、軟弱地盤を固めていく工事が始まれば、珊瑚礁の海は壊滅させられてしまうだろう。私たちはどうしたら裁判闘争を超える大きな闘いにできるだろうか。  

「本土」の地域自治劣化と向き合う

「安倍政治」はウソ政治であり、無責任政治だ。この起源は1952年の大日本帝国を引き継いだ「戦後日本国家」発足以来のものだ。安倍首相はこれを普遍化し、閣僚などの個人の利益まで広げた。「行政の長」安倍が国会を毀損し、司法を牛耳り、「独裁国家」を築きあげた。  

沖縄の基地問題の核心は、米日安保体制の維持・強化だ。米国の軍事戦略を必死で担ぎ、「国益」の顔をする。「アベノミクスは『アホノミクス』だ」と浜矩子(経済学者)さんは断言していたが、ヘイトやフェイクが蔓延する時代に首相のウソが相乗効果を上げてきた。米軍基地は日本の抑止力になっているなどのウソを『沖縄のため』と言い募り、『安保問題は国の専権事項』だと、地位協定を盾にして切り捨てる。  

ああ言えばこう言う、このスタイルを徹底的に極めてきたのだ。だから(フザケタことに)強いのだ。正論など屁の河童。長期にわたるデフレと戯れ言・攻撃的な姿勢で、「国民」に差別心を昂じさせ、過去にあったウソの「一流国幻想」を煽りながら、「そうだね」と安堵する「国民」と、悪循環に嵌まった劣化しきった国をつくりあげたのだ。  

「泥船」に乗せられているのに気づこうとしない人々。だから今回の参議院選も、市民共闘・野党共闘を果たしながら、野党は3分の1強しかとれなかった。これを「勝利」という欺瞞。過半数を押さえなければ、政権の横暴を抑えられない。  

これは4月の統一地方選に現れていた。11の県知事選で対抗馬を出せたのは、北海道だけだった。市民・野党勢力は、地域自治を巡って劣化していることに無自覚だ。だから、「沖縄のように闘おう」と言うのは安易すぎる。このままでは国政を変えることは不可能だ。  

沖縄の鮮烈な闘いを 本土の地域・職域につなげて

安倍政権は沖縄に過敏に反応するが故に、沖縄を差別しなめてかかってくる。2014年の県知事選で「オール沖縄」の端緒ができた。この構造は、米日政府によって重石を乗せられてきた沖縄が闘い続けてきた中で育んできたものだ。  

その核心は、(1)沖縄戦の経験に根ざした、基地・軍隊は住民の安全を守らず数々の悲劇を作り出してきた歴史にあり、(2)基地経済は沖縄の発展の阻害物になっており、脱基地経済を沖縄の文化・自然を基礎に構想することは可能だ、との2点に集約される。  

2014年県知事選は、仲井真弘多知事の裏切りが沖縄の人々を突き動かし、翁長雄志知事を誕生させた。18年県知事選は、その翁長知事が病死に追いやられたことで、翁長前知事の遺志が広範に広がり、玉城デニー知事誕生の原動力になった。  

他方で、18年の名護市長選、石垣市長選、沖縄市長選、宜野湾市長選で、オール沖縄陣営は負け込んだ。市民の暮らしを底上げし、脱基地経済の展望を示す能動性が大きく問われているのだ。  

仮に「オール沖縄」が完璧だとしても、敵は官邸にあり、安倍政権は「オールウソ」だ。国家が振りかざしてくる諸々の攻撃(行政不服審査請求や司法の判決、日常的に繰り出されている米日地位協定による強権など)をどうしたら突破できるというのだ。  

私たちは、沖縄の闘いの中で「勝つ方法は諦めないこと」と繰り返してきた。これをお題目にしてはならない。闘いの現場から生み出す抵抗を、自律型の民主主義の経験として、沖縄県内外の人々が共に作り出す闘いにかかっている。問われていることは、対話能力と信頼関係であり、実践としての非暴力の行動だ。  

全国から座り込みに集まる参加者各位に望みたいことは、機動隊に排除された経験を一時のものにせず、この現実を噛みしめ、この国の構造を見極め、ご自身の課題(地域・職域・生き方)とつなぎ合わせ、共に闘うことにある。  

安倍政権は、いよいよ「島嶼防衛」を口実に戦争に向かっている。何としても止めなくてはならない。 

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