【連載8050(1)】扇情的な報道や自己責任論ではなく 人と穏やかに、じんわりと関われる社会を インタビュー「NPO法人 神戸オレンジの会」スタッフ 大巻 智子さん

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7040/8050・ひきこもり状態の支援者、当事者に聞く

今年5月、川崎・東京練馬の殺傷事件の容疑者がひきこもり状態だったことが話題になった。ひきこもり状態は、20年前から社会問題化し、事件と結びつけられたりした。今は当事者が40~50代、親が70~80代に高齢化し、共倒れの危険性が「7040/8050問題」と騒がれている。  

社会的支援は必要だが、まずは当事者や支援者の声を聞くべきだろう。今の社会のあり方こそを問い直す人や、「ひきこもっていても生きていける社会が必要」という人たちがいる。1998年からひきこもり当事者や家族が集まる場を続けてきた「NPO法人 神戸オレンジの会」スタッフ・大巻智子さんに話を聞いた。(聞き手:編集部・園)

雇用悪化、社会劣化による 当事者の多様化

 オレンジの会は、98年にひきこもりの子どもを持つ親が立ち上げました。保健所の一室から始まり、費用も持ちだし。2000年に、当事者や親が気軽に集まれる拠点として、JR兵庫駅近くの4階建てビル一棟を借りました。現在は兵庫県内の46家族ほどが参加し、「親の会」などを開催、心理カウンセラーも来ています。当事者は1日10人ほど来て、雑談、TVゲーム、パソコン、料理、陶芸などをしており、いつ来て帰ってもOKです。電話相談も受けます。年間利用者は、のべ1770人にのぼります。  

私は、兄が30年以上前からひきこもっていたため、最初は家族として関わりました。世話人の1人が抜けたために03年から代わりにスタッフになりました。当時は、親が子どもを連れてきて、子どもの当事者はうつむいていましたが、今は、自分で調べて来る当事者が増えました。それもアポイントを取るなどの社会的スキル、つまり労働経験のある方も増えました。  

昔は、不登校からひきこもり状態になる方が多かったです。でも今は裾野が広がっています。リストラの被害者、親の介護で離職後に復職できなかった方、家族から虐待を受けてきた方、結婚後に他者との関係が薄れた主婦の方など、多様な理由でひきこもるようになっています。企業が就職難を作ったため、就職や結婚がゴールにはなりません。  

また、発達障がいと診断されている方も増えたので、「普通」の幅が狭められている影響を感じます。  

当事者を追い詰める 自己責任論と労働圧力

どの理由の方も、「自分でどうにしかしなければいけない、でもできない」と思った時にひきこもるようになっているようです。  

働きたい、働けるようになりたいと思っている人の方が多いですが、「怠け者、働け」という圧力にさらされているため、支援の相談にも行きにくくなる。雇用環境の悪化は国や企業のせいなのに、自己責任論が私たちに染みついているのです。  

今出会えている人はSOSを出せた人で、私たちがまだ出会えていない苦しむ当事者が大勢います。問題や対応が家族の中に閉じ込められている影響もあります。だから親と子の高齢化がセットで危機と言われています。  

私にも危機感があります。今のままでは、親子ともに年齢と孤立を深めたまま亡くなります。私たちはまずそうした人たちとつながりたいのです。生活保護を取り易くすることが必要です。発達障がいの方は、障がい者福祉で暮らせることも必要です。  

しかし日本はそうさせない労働圧力が強すぎます。同じ労働でも、今の過酷さとは異なる、みんなが幸せになれるような働き方が増えれば良いでしょう。また、「ひきこもっていても生きていける社会が必要」という声もあります。  

私たちのビルは、全国でも有数の大きさではないかと思います。居場所のスペースが広いとさまざまなことができます。ひきこもり支援所が就労支援所に変えられていったため、スペースを確保できない所が増えました。川崎・練馬事件を機に、全国親の会が居場所機能の再開・拡充を国に求めています。  

ひきこもりや8050は「状態」 固定化せず社会の問題に目を

川崎・練馬事件については、TV報道が攻撃的です。ある当事者が「事件が起きるまで注目もされず、起きたらすぐ僕らがバッシングされるなんておかしい」と言っていました。  

「ひきこもり」という「人間」がいるのではなく、「状態」のことです。それを、人として固定化して偏見と攻撃を強めています。「7040/8050」も状態のことですが、固定化して家族に閉じ込めています。  

踏み込んで言えば、人や社会とのつながりを極限まで絶たれ続けたため、他者を求め接しようとした時に、破壊・攻撃衝動の爆発になることはあり得ると思います。  

しかしそれも、ひきこもり状態の人だけに言えることではなく、日本社会全体が「私たち」という感覚を失っているからですし、人と穏やかにじんわりと関わっていくことができない資本主義社会が暴力的だからです。大人が昼間ぶらぶらしていたら、不審者扱いされます。行く所がなくて引きこもるのです。それは当事者ではなく、社会の問題です。  

つまり必要なのは、(1)行ける場所を増やすこと、(2)生活保護など福祉を拡充すること、(3)人の内面を労働圧力や同調圧力から解放すること、(4)事件報道などでのイメージ固定化をやめること、(5)私たちのような支援活動の拡充、だと思います。

神戸オレンジの会 

R兵庫駅から徒歩3分足らずです。お電話を頂きますと、JR兵庫駅や高速鉄道大開駅までスタッフが道案内に参ります。 兵庫県神戸市兵庫区羽坂通4-2-22 TEL/FAX 078-515-8060 kobe.orange@gmail.com 火曜日~土曜日 祝日も開いています。お盆・年末年始はお休みです。 11:00~18:00 (居場所は12:00~18:00)

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