◀不安さんとわたし《当事者研究的コミックエッセイ・総ルビつき》/132ページ/山吹書店 /2019/8/5
「自分は世界から嫌われているのではないか」―世界に対する不信感からくる漠然とした不安。著者のナガノハルさんは、双極性障害Ⅱ型を患い、うつと軽躁を2~3カ月ごとに繰り返している。不安とは、だれでもなじみのある感情だが、それが極端に生活に支障をきたす状態で、この漫画を描く前は途方に暮れていたという。
この漫画は、不安にさいなまれている人の一助となることを願って、ナガノさん自身が日常生活をどうにかこうにか営むために編み出した不安を解消する知恵を結集したものだ。
作中では、「心にうずまくいやな感情、そわそわ、焦り、恐怖、おちこみ」などの感情を擬人化した「不安さん」と、著者自身の分身「ぽやっと」が対話し、折り合いをつけながら付き合っていく。
不安なことを思い浮かべると、ものすごく怖くなり、苦しくなる。そんななかで、なんとか自分を保とうと編み出されたのが「不安さん」だった。症状に名前をつけると、対象として取り扱い可能になる。一歩引いて、客観的に不安を見られるようになる。また、名前をつけると人にも言いやすく、「いま、不安さんが来ていてさ」と話せるようになったそうだ。
ナガノさんは、漫画を描くことを「ライフワーク」と位置付け、本作のほかにもフェミニズムをテーマにした漫画も手掛けている。日中ありあまるほどの時間があり、周囲からはうらやましがられるが、ナガノさんは、その時間をどう使えばいいのか不安で仕方ない。だから「ライフワーク」として漫画を描くことで不安を解消している。
しかし、そんな時ですら、「これからも漫画を描き続けられるのか」と「不安さん」が到来するが、「対話」して、日々を生きていこうとしている。