【贈呈本紹介】隠し味としての人権 竹尾正己人権考「孤楽夢」集 評者 編集部 村上薫

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 この本は、7月の「狭山アクション滋賀」にて、参加者からいただいた。  

著者の竹尾氏は建設省を33歳で退職後、滋賀県で部落解放運動に身を投じ、部落解放同盟滋賀県連合会書記長を務めた。日本の近現代史の考察を深め「平和・人権・憲法」についての提言を行い、2015年、79歳で没した。  

「父への墓標」として竹尾氏の息子が提案し、人権問題に取り組む市民団体「人権ネットワーク八幡」の機関紙に生前、彼が書き綴った文章を1冊にまとめた。時事問題についてまっすぐに切り込み、ユーモアを交えつつわかりやすく書かれた全56篇のエッセー集である。  

同和対策事業終結に伴い、2008年に地域総合センターを、13年に市人権センターの廃止を決定した近江八幡市は、一部施設の取り壊しを計画。地域にとって大きな役割を果たしてきた八幡教育集会所が、そのターゲットにされた。そこで、その施設の一角を市から借用し、人権問題に取り組む市民団体を立ち上げようと呼びかけ、人権ネットワーク八幡が13年に結成された。  

この設立と同時に、週1回「人権ネットワーク八幡NEWS」の発行が始まり、竹尾氏は、TMというイニシャルで「孤楽夢」を連載した。幼少期の戦争体験で感じた矛盾、部落解放運動を経て到達した人権社会の構想、また、自身が立ち上げた歴史館などについて、自らの実践を通して導き出した普遍的な課題を、いかに説得力をもって語るのか苦心しながら執筆したという。  

「儲かる同和教育」では、滋賀県人権センターで働いていた竹尾氏のもとにアポなしで訪ねてきた人が「儲かる同和教育はありませんか」と質問してきた体験が紹介される。  

この質問の背景を【(1)企業内の同和担当に指名された、(2)研修を企画しても社員は居眠りかフテクサレ、(3)管理職や経営者は「『同和』はお前に任せた」と後ろ向き。そこで、まず経営者を説得して前向きにさせるためには、どうしても「儲かる同和教育」が必要だ、となったのでしょう】と彼なりに分析している。私たちは、こういった短い体験談から当時の時代背景を垣間見ることができる。  

56篇の中に、部落の話以外にも、原発問題・ヘイトスピーチ・集団的自衛権など、多方面からの切り口で「人権」について考察された文章が収められている。

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