【食を通じて 社会を考える】完食指導で 「食べられなくされる」子どもたち 山口 健太さん(一般社団法人 日本会食恐怖症克服支援協会 代表理事)インタビュー

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食べること。それは栄養やカロリーの摂取であり、癒しや楽しみでもある。また、他の人と食事をすることは、人間関係を深化させていく場や経験の共有、コミュニケーションの機会でもある。重要で多義的な「食」について、人民新聞では食を通じて社会を考えようと、さまざまな立場の人への取材を計画している。  第1弾は「学校教育における食の画一化」として、給食を残さず食べるよう指導する「完食指導」を取り上げる。出されたものを残さず食べることは「正しい」が、指導の行き過ぎにより、人前での食事に耐え難い恐怖や不安を抱く会食恐怖症という心の疾病を発症する子どもがいるそうだ。元当事者、カウンセラーとして会食恐怖症の克服を支援する山口健太さんにお話をきいた。  (聞き手 フリーライター 谷町邦子)

学校全体の同調圧力や 教師同士のプレッシャーも背景

 毎月学校の給食指導で会食恐怖症になる子どもについての相談を受ける山口さん。山口さんが完食恐怖症の当事者にアンケートをとったところ、6割が学校や家庭で受けた完食指導によるトラウマからだったそうだ。完食指導以外の指導で子どもが会食恐怖症を発症することはあったかとたずねると、「嘔吐をしてしまった時に、先生から心配されるのではなく、『怒られた』という経験をした子が、『また、吐いたらどうしよう』という思いが強くなり、会食を避けるようになった」という相談もあったという。子どもの苦痛や不安に寄り添わず、健康を気遣わないことも「指導」として成り立つのだろうか。  

給食指導の中には、食べ終わるまで休憩時間を与えないなど強硬なものもあるが、教師にそういった指導をさせてしまう背景はなんだろう。  

山口さんは教師から子どもへの嫌がらせ(ハラスメント)のような事例もないわけではないとしつつも、教師一人の意志を超えた圧迫があったのではないかという。  

「多くは周りの先生から『あなたのクラスの残飯は多い!』と指摘されたり『残飯を減らそう週間』などの学校の取り組みがあったりして、先生自身がプレッシャーを感じています」  

他の教師からの指摘を受けたり、学校全体の逆らいがたい流れを感じたりした教師が、弱い立場の子どもにプレッシャーを転嫁する傾向があるようだ。  

山口さんは子どもが会食恐怖症になってしまった保護者からだけではなく、教師から相談を受けることもあるが、「食べない子に対してどうしたらいいか?」という漠然とした内容のものが多いという。山口さんは、教師が「どうすれば食べてくれるか」を学ぶきちんとした機会がほとんどないと感じている。  

「頑張って食べさせる」ではなく 食への興味引き出す指導を

では、どのような方法なら、子どもの人権を守った上で、なるべく食べ残しや偏食をせず食べるよう指導できるのだろうか。山口さんは、まず、従来の「頑張って食べさせる」ではない方法を提案する。 「食に前向きな興味を持つような関わり方をしなければなりません。例えば、子どもの頃はコーヒーが苦手でも、大人になればコーヒーを飲めるようになりますよね。そこには単純な味覚の問題ではなく、『コーヒーを飲める=大人になった』という『憧れ』など、前向きな興味が存在するのです。子どもの食に対する興味を引き出せるかどうかが大切になります」。  

山口さんは、まずは学校の教師が子どもの食べる楽しさや前向きな気持ちを引き出す指導を学ぶ必要があると考えている。また、子ども一人ひとりが食べられる量や咀嚼力、嚥下力に柔軟に対応したり、子どもが安心して食事ができる環境づくりもカギとなるそうだ。  

そもそも、なぜ残さず食べることが良いことなのか。食事において大切なことはなにか。正しい食べ方を子どもに押し付ける前に、大人自身が日々の食のあり方について考え、意見を交わす必要があるのだろう。

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