【文化欄】Iターンする若者たち(2)ココペリハウス 編集部 矢板 進

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農と生き物の営みのなかに ひとの暮らしがある

出会いは るり渓やぎ農園

 笑い声の絶えないインタビューであった。「憩いと癒しの場をつくりたい」というココペリハウスの藤原さんの姿勢は、今回のような初対面のインタビューにもあらわれるのだろう。それが〈憩いと癒し〉の空間を作りだす。サロンを開いて1年になる。これからどのように場を展開していくのか。テープを再生しながら期待が膨らんでいく。そんなココペリハウスの藤原さん、荻原さんに話を聞いた。  

イベントの企画運営をしたかったという藤原さんは、大学時代にはエコツーリズムのような自然でひとを呼ぶ観光デザインを学んでいたが、もともと自然や田舎が好きで街でイベント会社に勤める気はなく迷っていたところ、たまたま淡路島の縄文祭りというイベントに行った。「太古の暮らしを感じる」がテーマのマルシェで、職人など手仕事をもつ人たちが集まっていた。そんななか、震災や原発の問題などが話題になり、「自分で食べ物を作れるようになれたらいい」という思いが芽生えたという。農業に特別興味があったわけではないが、農と生き物の営みのなかにひとの暮らしがある循環的なライフスタイルに魅力を感じるようになった。  

藤原さんの出身は静岡。荻原さんの出身は長野県で、ふたりとも田舎の田園に囲まれた子ども時代を送っていた。出会いは「るり渓やぎ農園」。ヤギの堆肥や鶏糞で野菜を育てる循環農法を実施しているところだ。荻原さんはヤギが好きでどうしても山羊牧場で働きたくて、るり渓の募集を待つほどであったという。家を探していて空家に住み始めた藤原さんが声をかけ、ふたりで住むようになった。現在は藤原さんの手仕事のマッサージの他にヨガ、鶏を絞めて参加者で食すなどのイベントをしている。今年、田んぼが手にはいったので、田植えや稲刈りのイベントを計画している。  

地域のイベントにも積極的に参加しており、去年、人民新聞でも紹介した「みとき屋」さんのクラフト市や日吉町の旧五ヶ庄小学校のマルシェ、園部の生身天満宮の地の和人の輪市などでヤギを連れて、荻原さんの焼き菓子と藤原さんのマッサージの出店をしている。またふたりは毎週火曜日に園部の「Coco Can」というシェアキッチンで「きょうは定食屋さん」という定食屋をしている。材料はココぺリハウスの横にある畑や近隣の農家さんのものを使っている。  

〈憩いと癒し〉

マッサージも定食屋さんも根元のところは〈憩いと癒し〉につながっている。どんな理由でIターンするひとが多いですか? という質問に「身体を壊しているひと、精神的にやられちゃったひとが多いというイメージがある」と返ってきた。これまでの農村での取材でも同じような質問を投げてきたが、このような回答は初めてである。見るひとによって魅力がちがい、さまざまなジャンルのひとが集まれるというのも自然のひとつの素晴らしさとも言える。  

「身体を壊して初めて食や暮らしに疑問をもつ。街で暮らすひとにも『癒し』を通して、自分の生活や身体について考えるきっかけをもってもらえたら。田舎で遊ぶというところより、ぎゅっと一歩踏み込んだことをしていきたい」。  

また、近くでカフェを開いたり、コミュニティスペースや宿泊施設を作っているひともいるそうで、「同じ地域で活動するひと同士の、横のつながりで『田舎暮らし体験ツアー』のようなものできたら」と藤原さんは夢を語る。7割がIターンであるという同世代で集まる南丹女子会にも参加し、ヤギファンを集めてヤギ飼いを訪問する「やぎツアー」も開催した。  

一方で地域のひとが息抜きできる場所にもなってほしいといろいろ思案している。どこのIターン者を訪ねても、それは大きなテーマとなっているようだ。ココペリハウスのおふたりの明るい笑顔と笑声に期待してぜひまた訪れたい。

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