【イスラエルに暮らして】日本政府もかかわる「パレスチナ建国」 イスラエル在住 ガリコ 美恵子

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戦争勃発を想定した和平案

 米国大統領上級顧問クシュナー氏が、「パレスチナ・イスラエル和平案」を6月に発表する、と国際社会を騒がせている。ところが5月7日、イスラエルの「アイヨム紙」が、トランプ政権が「世紀のかけひき」と呼ぶ、「二国家和平案の主軸」を暴露した(右下資料参照)。  

この和平案執行に際し、約32兆円が5年間にわたり、欧米諸国、湾岸諸国から支給されることになっている。オーストラリア、カナダ、日本、韓国は、これを補佐する形で支援金の捻出を約束している。しかし実際には、主な支援金は、和平合意によって利益を得る石油原産諸国に提出させる。  

暴露書類はイスラエル外務省によって公開されたとしているが、今のところ、信ぴょう性を確認できる報道はない。が、「モンドワイエス紙」は、繰り返しこの件を報道し、クシュナー氏の無知を批判している。  

イスラエル建国により難民となったパレスチナ人(約700万人)に対する帰還の権利はどうなるのか。今も帰還権を要求するデモを、毎週金曜ガザの民衆が行い、イスラエル軍の攻撃で多数の死傷者が出続けているのを無視するのか。入植地や分離壁などの建設で奪われたパレスチナ人の農地・家屋は泣き寝入りせねばならないのか。分離壁は撤去されるのか。  

現在パレスチナ自治政府が行政・治安するA地区は、行政はパレスチナが担い、治安はイスラエルとパレスチナの共同治安体制と名目上でされていながらも、実際はイスラエルが治安管轄するB地区と、行政・治安共にイスラエルが管轄するC地区に囲まれており、それぞれが離れ孤島となっている。これをつなぐ道路建設のためにパレスチナ人の土地がさらに奪われることも予想される。  

和平案の1は、パレスチナを独立国家として認めることを前提とする。イスラエル国民のほぼ半数が反対するだろうが、さらなる占領の存続を約束する以下の内容を知れば、イスラエル側では大した反対運動は起きないと踏んだのだろう。  

2は、国際法違反である入植地からイスラエル人が撤退しないことを宣言する。昨年ハーン・アル・アフマル・ベドウィン集落の撤去をめぐり、抵抗運動が展開された際、米国議員が集落の代表者に「集落に接する国道を4車線に拡大し、周囲は全てユダヤ人入植者の所有地になることが決まっているから、集落は撤去する」と説明したことを裏づける。が、この集落は抵抗運動の成果により今もそこに存在している。  

3は、農地、工業地をエジプトから借地して作るという案だが、シナイ半島は、夏は気温50度になる灼熱の砂漠山岳地帯だ。土壌そのものが農地に適さない。ベドウィン以外が暮らせる土地柄ではない。そこにパレスチナ農民、工場作業人を強制的に移転させる案は、不当である。  

しかし、最近ユダヤ人入植地建設許可が急速に出されてきたこと、パレスチナ人の家屋撤去、土地・家屋の収奪が急ピッチでおこなわれていることは、4を裏づける。4で、「イスラエル人がパレスチナ人から土地・家屋を購入するのを禁止」となっているが、パレスチナ人所有物件を法的手段を用いて略奪しているイスラエル人には痛くもかゆくもない。  

このような内容に、パレスチナ側が納得しないのは当然である。しかし、承諾しなければ、莫大な科学兵器をもつイスラエルが攻撃すると脅す。和平とは名ばかりの、パレスチナ人の意思を無視した、不当な押し付け案だ。これが引き金となって全面攻撃となれば、武器産業は活発になる。儲けるのは一部の人間だけだ。  

国連や人権団体が意見しても、過去と同様、イスラエルも米国も無視するだろう。日本政府は批判どころか、この和平案に加担している。6月17日から19日、千葉県の幕張メッセで武器見本市が開催される。日本人が今せねばならぬことは、武器産業の停止を呼びかけることだ。

二国家和平案の主軸

1:パレスチナ国には軍による武装を認めない。軽銃器を所持する警察のみ認定。パレスチナ人のセキュリティはイスラエルが担い、パレスチナ政府は治安料金をイスラエルに支払う。

2:東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区に存在する全入植地をイスラエルのものとする。現在、ヨルダン川西岸地区の62%が入植地である。エリアCに指定された区域に住むパレスチナ人6万5千人の生存権に関しては明確にされていない。西岸地区のヨルダン渓谷を走る国道90号線は4車線の有料道路になる。が、パレスチナ人がそこを使用できるのかどうかも明確にされていない。アレンビー橋国境(キング・フセイン・国境通過地点)はパレスチナ国によって管理される。

3:エジプトとの長期土地借用契約。パレスチナの農業地帯、工業地帯、空港建設のために、エジプトから土地(シナイ半島と予測)の一部が長期借用される。借地値はこれを援助する湾岸諸国とエジプトとの交渉による。

4:エルサレムは、パレスチナおよびイスラエル、両国の首都とする。東西エルサレムは分断されない。東エルサレム(旧ヨルダン領、西岸地区内)のパレスチナ人35万人はパレスチナ国民となる。イスラエル人がパレスチナ人から土地家屋を購入すること、またその逆も、禁止となる。

5:ガザの封鎖は、ハマスが武装解除すれば、解除される。ハマス党の武器はエジプトに受け渡すことが要求される。

6:パレスチナ建国後1年以内に選挙を行う。

7:境界線の閉鎖解除。物流、労働者の移動は自由に行われる。ガザと西岸地区との間はこれをつなぐ橋が作られる予定。

8:過去の和平会談でパレスチナ人が要求してきた「政治犯の釈放」は、3年以内に徐々に実施される。  

もし両者のいずれかがこれを承諾しなければ、米国が強力な罰を課す、と注意書きしている。イスラエルが承諾しない場合はイスラエルに対する支援をカットする。パレスチナ側が承諾しない場合は、海外からの支援送金を不可能にする。パレスチナ自治政府が承諾しても、ガザで主権を握るハマス党またはイスラミック・ジハード党が承諾しない場合は、イスラエルがガザを攻撃することを米国は許可し、加担する。

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