【視点論点】アラブ諸国のユダヤ人迫害をデッチあげ賠償を要求するイスラエル 脇浜義明(編集部)

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 パレスチナ・イスラエル問題に関するトランプの「世紀の取引」の一部が見えた。すなわち、加害者と被害者をすり替える大芝居である。

 イスラエル政府のギラ・ガムリエル社会平等相が、「アラブ諸国とイランにおけるユダヤ人迫害という歴史的不正を正すときがきた。数十万人のユダヤ人が剥奪された財産を回復するときがきた」と宣言し、1940年代後半にアラブ諸国から「強制追放された」とイスラエルが主張するオリエンタル系ユダヤ人への賠償として、アラブ7カ国とイランに対して2500億ドルの支払いを要求したのだ。

 オリエンタル系ユダヤ人とは、アラブや北アフリカのユダヤ教徒である。パレスチナに移民しユダヤ国を作るシオニズム運動は、あくまでヨーロッパの運動であり、初めシオニスト活動家はアラブ世界にユダヤ人が存在することに気が付かなかった。

 シオニズム運動は、ユダヤ人がパレスチナに移住しなければ成立しないが、思うように移民が増えなかった。そこでナチのユダヤ人迫害・ホロコーストを利用してパレスチナ移住を勧めたが、多くは米国に移住してしまった。その頃に初めて北アフリカとアラブ諸国のユダヤ人の存在が指摘されたのだ。

 イスラエル国誕生の翌年あたりから、ホロコースト生存者に次いで、オリエンタル系ユダヤ人のパレスチナ移住が始まった。イスラエルが各地に工作員を送り込んで、移民を奨励したのだ。

オリエンタル系ユダヤ人に差別的同化強いたシオニズム

 しかし彼らは、人口問題に取り組む補助材料としかみなされず、軽蔑と差別の雰囲気に直面しなければならなかった。移民を推進するユダヤ機関の中では、「食事の仕方や入浴など、文明生活様式を教え込まなければならない」ことが話し合われた。被植民地の民衆と同じような、まったくの他者に同化・変身させられる過程の始まりであった。

 人間らしい住居も、子どもの教育も、医療も、仕事もないままに放置され、しばらくは公共施設の前庭とか公園とかで路上生活をした者が多くいたという。みんな空腹に苦しんだ。彼らが置かれた状態があまりにも悲惨だったので、オリエンタル・ユダヤ人移民促進事業を担当していたマパイ党指導者でさえ、『彼らがこんな扱いを受けるのが分かっていたら、私は彼らをそのままシリアに置いておく選択に投票したであろう』」。(拙訳書『7番目の百万人』、ミネルヴァ書房)と口にした。

 今回のガムリエル大臣案は、ガザで見られたようなパレスチナ難民の帰還運動への対抗的談話だが、その厚顔さには開いた口が塞がらない。

 パレスチナ人に対して犯した犯罪ばかりか、オリエンタル・ユダヤ人に対して犯した犯罪への認識が皆無であるだけでなく、彼らをホロコースト生存者と同じように「迫害」の被害者として、彼らの「守護神」イスラエル国家に賠償せよと要求しているのだ。

 日本の安倍首相も顔負けの厚かましさではないか。

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