【時評短評 私の直言】2025年大阪万博「ジャンボ貧乏くじ」 大当たり 編集部 トシ

またも負の遺産の積み上げか

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 11月24日の朝刊は、万博が大阪に決まったことを報じる記事が1面トップ。決定を喜ぶ松井大阪府知事や世耕経済産業相の写真を見せられて、朝食がまずくなった。決まってしまうと祝賀ムード一色となるメディア状況も不気味だ。

 テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。開催地は大阪の「負の遺産」と言われてきた人工島・夢洲(ゆめしま)。来場者数2800万人、経済効果は約2兆円を見込むという。大阪府・市は夢洲で統合型リゾート(IR)の開発を目指しており、米国のカジノ大手ラスベガス・サンズ社は、開催決定への祝辞とともにさっそく参入の意欲を示している。言い出しっぺの堺屋太一元経企庁長官をはじめ、橋下元大阪市長、松井知事ら誘致を先導してきたメンツからして、誘致は特定階層のカネと利権のためであって、庶民は巨額開催費用の尻拭いをさせられないよう注視する必要がある。

 読者が夢洲と聞いて思い出すのは、2013年の震災がれき受け入れであろう。府は市と連携して、同年1月から9月まで岩手県の震災がれき約1万5千トンを受け入れ、夢洲の北港処分地に埋めた。復興支援の美名のもとで放射性物質を拡散させる広域処理に、地元此花区住民をはじめ、多くの人が反対したが、維新・公明が強引に押し切った。そして、反対運動を闘っていた本紙でもおなじみの阪南大学・下地真樹さんは、前年12月、大阪府警に不当逮捕されたのだった。

 放射性物質を埋めたこの地に、ギャンブル依存症の患者を増やす恐れのあるカジノとセットで万博を誘致して、いのちと健康を未来に発信するというのだから、悪い冗談だ。

 ところで、同じく大阪湾内にある人工島・関西国際空港が9月の台風21号で被害を受けたことは記憶に新しい。このとき夢洲でもコンテナが散乱し、荷役機械が倒壊するなどしていたのである。25年5月3日~11月3日の開催期間中に台風に襲われる可能性は、少なくない。また、地震による液状化や地盤沈下の心配だってある。

批判したら「非府民」扱いなら「非府民」で上等!

 こんな危険な場所での開催を懸念する声に、松井知事が「風評被害となる邪魔は慎んでください」とツイッターで反論したことが話題となったが、もちろんわれわれは慎むつもりなんてない。さまざまな手立てを考えて邪魔しなければならないだろう。祭り騒ぎに巨費を投入するのではなく、地道な行政運営に力を入れろと言っているのである。税金の使われ方に疑問の声を上げている府民に対して、「邪魔」とは何事か。府知事のくせに。

 どのような万博にするのかは、抽象的なコンセプトにとどまっている。案としては、インターネット上にバーチャル会場を設けて遠隔地の人に楽しんでもらう計画もあるようだ。ならば、どうして施設を一カ所に集める必要があるのか? そうしないとゼネコンが儲からないからだ。

 東京五輪後の景気浮揚の「起爆剤」にしようという思惑ありきで、理念などどうでもいいのだから、具体化が進んでなくて当然だ。だが、そのどうでもいい理念の具体化(電通のような虚業はそのためにある)と同時に、国家的事業の邪魔をするなという雰囲気が醸成されていくのは間違いない。首相は「『オールジャパン』の体制で取り組みたい」と力んでいる。

 水をさすようなことを書くと、お祭り気分に浮かれている人たちから、非国民・非府民呼ばわりされかねない。非府民?いいねえ「ひふみん」。それでいこう。

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